あのキスの意味はなんだったのだろうと、一郎太は今も考えていた。
女々しいなと自覚はあったものの考えずにはいられなかった。
そこにはもう何も触れていないはずなのに今も唇が熱いのだ。




【mistletoe】

何の変哲もない部活帰り。
商店街を二人で歩いていた時のことだった。
左右の店先や、街路樹はクリスマス一色で。
美しい電飾やきらきらしたオーナメントが日暮れの街を彩っていた。
そんな中、今日の練習の話をしながら、普段通りに帰路をたどっていたのだ。
商店街を抜ければ、そこからは各々の家へと道が分かれる。
もう少しだな、と思ったのも束の間、隣を歩いていた少年は唐突に立ち止まった。

「どうした円堂」

一歩うしろに立つこととなった彼を見やり問うが答えはない。
それどころか視線は彼方を向いている。
ちょうど一郎太の頭の上あたりだ。
その視線を追って振り返ろうとした瞬間だった。
ふいに近づいてきた気配に声をあげる間もなく、暖かさを感じる。
鼻先をくすぐるのは、彼の特徴的な前髪だ。
では、この唇に、触れたのは。



そこまで考えて、思考を追い出すようにかぶりをふった。
思い出すだけで熱を持て余してどうしようもなくなってしまう。
事故なんかではないし、彼に限ってからかっていただけ、なんてことはない。
ましてやただの挨拶というわけではないだろう。
だって、あの時。
あの時、あんなに綺麗な微笑みを浮かべているだなんて。

そんなの卑怯だ。





あのキスの意味はなんだったのだろうと、一郎太は今も考えていた。
街灯に飾られたヤドリギだけが、その答えを知っている。


×





これを機に二人がお互いの気持ちに気がつくという。
気がつかなかったらびっくりする。


クリスマスの日にヤドリギの下でキスをすると、その二人は結ばれ末永く幸せになるのだとかなんとか。
本来は宗教的な話が起源らしいのですが 時を経てこのような言い伝えになったそうです。
商店街の街灯に飾りつけしてあって、円堂さんはたぶん飾りつけをしたおじさんとかに聞いたんだよ。


20101224
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