黙りこんだまま俯く幼なじみに、何と言葉をかければよいのだろう。
ごめんと頭をさげるのは違うし、よくやったと肩をたたくことも躊躇われた。
自分が居れば勝てたなどと自惚れるつもりはない。
けれど、監督だけでなく、司令塔二人、そしてキャプテンである自分が居ない状態での試合だ、軽い気持ちでできるものではない。
彼の性格ならば、なおさら。
いっそ、後輩たちのように泣いてしまえたら楽なのに。
唇をかみしめた彼の腕には、未だに赤いバンドがはめられたままだ。
それに触れる指の白さに、思わず手をのばしていた。
瞬間、見開かれた瞳は驚いた時のそれではなく。
まるで怯えたように歪められていた。
「なんだよ、円堂」
しかしそれも一瞬。
次に視線があった時には、既にいつもの調子に戻っていた。
言うべきことを考えていなかったので、余計に慌ててしまった。
「風丸、あの、」
「ごめんって言ったら怒るからな」
「あー、ええと」
口ごもり目を泳がせるしかない自分に、たっぷりと時間をかけて溜息をおとされる。
「やっぱり言う気だったんだな」
キ、と睨みつけてくる瞳は、いつも自分を叱ってくれるものと同じだった。
そのことに胸がいっぱいになってしまって、言葉が続かない。
「あのな、円堂」
結局、先に口を開いたのは自分ではなかった。
「お前なんか居なくたって、みんなは上手くやってたぞ」
そもそも韓国戦の時だって、だいぶ長い間お前はベンチだったんだ。
言って、細められた瞳がこちらをとらえる。
「お前なんかいなくたって大丈夫なんだ」
確かめるように頷くと、長い髪がさら、と一房流れて右目もかくしてしまう。
覗きこもうとするより早く、掴んだ形のままだった手のひらが優しく外された。
「けど、やっぱりお前が居ないとダメだよ」
差し出されたのは先程まで彼の腕にあったキャプテンマーク。
弾かれたようにあげた視線の先、困ったように浮かべられた笑みがあった。
「風丸、あの」
「だから、ごめんって言ったら怒るから、」
言い終わる前に差し出された腕ごと相手に抱きついて。
慌てた声が制止するがお構いなしに背中をたたいてやった。
「風丸、ありがとな」
ぎゅ、とキャプテンマークを握りしめる。
これを渡された時の想いを、背負った重みを、彼は、みんなは共有してくれたのだ。
忘れていたわけじゃない、改めて感じる仲間の存在。
ありがとう、と再びこぼすと今度は耳元で溜め息を落とされた。
「円堂」
呼ばれて返事をする間もなく、感じたのは。
「今度遅れてきたら許さないからな」
「ひ、いてーっ」
頭の両側に走る痛み。
バンダナから飛び出た癖毛をひっぱられたのだと気がついたのは、目の前の少年が悪戯っ子のような笑みを浮かべてからだった。
(もうきっと違えることはない)
(あしたも)
(あさってもしあさっても)
(きみのとなりで)
ゲームたぎりすぎてフライング・アルゼンチン戦
アニズマ見たら消すかもしれない。