つい考えこんでしまう。
あの遠い空のむこうで、かつての仲間たちは今なにをしているのだろうか。
「そんなの、サッカーに決まってるじゃん」
「そういうんじゃなくてさー」
同じように校舎の窓から空を見上げていた瞳が、ばかにするようにこちらをとらえた。
あいつらが常夏の島で優雅にバカンスなんて想像できる。
言われてみれば確かにできない。
でもそういうことじゃなくてさ。
「がんばってるかな、とか、そういうこと」
ああそう、という投げやりな言葉に、センチメンタルな気分はあっという間に散ってしまった。
話しかけた相手が間違っていたようだ。
真っ黒な瞳がくりくりと楽しそうに揺れている。
大げさな溜め息は、笑い声にかき消されてしまった。
「ていうか半田」
ぴ、と勢いよく目の前につきつけられたのは人差し指。
「な、なんだよ」
思わず寄り目になりながら睨みつける。
人を指差したらいけないんだ。
いい加減文句を言おうと息をすいこめば、一足先に発された声にさえぎられてしまった。
「かつての仲間じゃないよ」
戦う場所が、追う目的が、今は違えども。
「僕たち今だって仲間じゃないか」
雷門サッカー部を解散した覚えはないよ、と笑う声は先程までの悪戯っ子のそれとは違った。
何も言えずに、息を飲む。
不覚にも泣きそうだなんて。
離れた距離と同じくらいに背中が遠く見えた。
かつての、と言ったのはなにか意味があったわけじゃない。無意識だった。
「バカ半田、泣くなよ」
突き付けられていた指はいつの間にか頭の上にあった。
優しい顔して、ぐしゃぐしゃと髪の毛をかきまわしてくるのが悔しくて、バカマックスと返すのがやっとだった。
そこに、言葉通りの意味がこめられていないことなど、すっかりバレてしまっているのだろうけど。
空がとても青いので
『こんにちはライオコットテレビの者です、イナズマジャパンのキャプテン円堂くんですね』
『はい、オレが円堂です』
『まずはFFI本戦出場おめでとう』
『ありがとうございます』
『ライオコットに来てさらに実感したかと思いますが、改めてこの喜び、まずは誰に伝えたいですか』
『そうだなあ、やっぱり』
『ご両親とか?』
『雷門で待ってる仲間たちに!』
20100728