「なあ立向居」

いつもにこにこと笑っているその人が至極まじめな顔をして言うものだから、思わず足をとめて振り返った。
夕日を背負った彼の表情はどこか暗い。

「ずーっとさ」
「綱海さん?」
「ずーっといっしょに居るなんて無理な話なんだよ」

数分前までしていた新必殺技の話題から、何がどうなってその話に至ったのかは分からない。
そもそも彼の考えていることが分かった試しなどない。
その思考は遙か海の彼方にあるのだ。
だから今回もそういうことなのだろう。
珍しく眉をハの字に曲げたその人に苦笑を返すけれど、きっとオレも同じ顔をしている。

「綱海さん綱海さん」

立ち止まったままの彼の隣まで戻る。
右側にあるその瞳を見上げた。

「そんなのあたりまえです」

驚きをうかべられたけれど構わずに続ける。

「先のことなんて何にも分からないです、でも」

そっと彼の左手をとった。
太陽に暖められた手のひらはとても優しい。

「オレは一緒にいたいなあと思います」

見開かれた瞳は、柔らかく細められていく。
そうだな、と返してくれる頃には、いつもの笑顔に戻っていて。
嬉しくなって声を出して笑った。
握りかえされた手がとても暖かい。

「夕日がきれいですね、明日は晴れるかなぁ」
「さあな、でも、」

明日のことですら、オレたちには分からない。
ただ、願いながら二人で手をつなぐだけなのだ。

「あしたてんきになあれ」

投げた靴は放物線を描いて草むらに落ちていった。






つなたちの日おめでとう!
20100420
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