「すみません」
「何の真似だ」 空間と同じ色の天井が視界の端を掠める。対象的な色のあの悪魔が視界一杯にいる。 時間だ、と帰路につこうとした天使の腕を悪魔が掴み引き寄せ、そのまま地面へと倒され覆い被さられた。 「何の真似だと言っている」 「すみません」 意図の分からない謝罪を繰り返す悪魔を退かそうと手を伸ばすも、直ぐに掴み取られ地に縫い付けられた。解こうにも存外力が強くびくともしない。 何が争いは好まない、だ。以前に聞いた話とは全くの正反対じゃないか。 改善しない状況と状態、訳の分からない悪魔の行動と痛む後頭部に、天使は苛ついた。 「案外、鈍いんですね」 「は?なにいっ、ッ」 いつの間にか四肢に割り込まれていた悪魔の足(であろうもの)が、天使の股座を押し上げる。息を詰めた天使が威嚇する様に睨み付けるも、動じた様子もなく薄らと笑みを浮かべ耳元で囁いた。 「捕食対象ってことですよ」 「っう、ぁ」 吐息が掠めたかと思えば、ぬるりと耳介を生暖かい物が這う感覚に肩が震えた。差し込まれる舌が粘着質な音を立て聴覚その物を犯されているような感覚に陥る。 いやだ、やめろ、やめてくれ。 思考は拒絶を示しているのに肝心の身体の自由がきかない。息が詰まりそうな恐怖に動かぬ身体が更に硬直した。
きっちりと詰められた襟を乱暴に解き、露わになった白い首筋に噛み付く。悪魔の鋭い牙が天使の柔肌を裂き、赤い鮮血を滴らせた。 白と赤のコントラストに頭がぶれる様な強い陶酔感に襲われた悪魔は、呻き声を上げる天使に構わず何度も噛み跡を残し、溢れる血液を舐めとった。 「ぅ、ぐ、ッ」 天使の血は甘く、全身が痺れるような感覚に陥った。痛みに喘ぐ声が甘美に響き、悪魔は本能のままに天使へと触れた。 滑らかな肌に悪魔が触れる度に穢れていく。 異形の腕は無垢な天使をゆっくりと堕とし、蝕んでいく。 邪魔な布をたくし上げ大きく開かせた四肢を這い、悪魔から生える触手が天使の後孔へと触れる。 「ぁ、い、嫌だ、や、っひ」 未知の恐怖に怯える天使に動きが止まる筈もなく、硬く閉ざされた肉壁を割き無慈悲に突き入れられた。 粘液に濡れた触手は容易に侵入を果たし、内壁を擦りながら奥深くまで蹂躙する。体験したことのない不快感に呻く天使を無視し、肉壁を広げるように蠢いた。
背が軋む、地面に擦れる羽が痛い。
グロテスクな性器の形を模した触手が天使を何度も突き上げる。耐え難い苦痛と抗えぬ快楽に嗚咽と共に涙を零した。 なんで、こんなことを、おれはおまえを。 体内にあたたかいなにかが広がる感覚を覚えながら、天使の意識はそこでぶつりと途切れた。
4.
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