「君も大概可笑しな人間だね」 一人の修道僧姿の男が口を開く。すぐ目の前、壁際へと寄せ身体を密着させるようにして腕の中に彼を閉じ込める司祭が、いつにも増して楽しそうに笑った。 「そうでしょうか?このくらい普通だと思いますが」 式典様だろうか、一段と豪華なその装いに、改めて彼の位の高さを知らしめられる。 「ほら、また敬語忘れてますよ」 「誰もいやしないよ」 「わかりませんよ」 そう言った男は躓きそうなほど長い裾を気にする様子もなく、脚を下肢の間へと割り入れる。人が居るかもしれない、と口にする者とは思えない行動に、溜息を短く吐き出した。 「へんたい」 「全く口が悪い、お仕置きが必要ですか?」 酷い問いかけは黙殺した。気にした様子もなく、司祭にぱさりと深めに被っていたフードを落とされ、そのまま頬、耳とゆるく撫でられる。しまい込んでいた少々癖のある金の髪が、重力に従って首筋を伝うように落ちた。 「弟子らしく、身も心も捧げてみるというのはどうでしょう」 至極楽しそうに笑う。 「それは本気?それとも遊び?」 「さぁ?どちらがいいですか?」 鼻先が付く程に近づけば、同じ金の髪が混じり合う。逃げる様子もなく、暫くの沈黙の後傲慢な笑みを浮かべ修道僧が口を開く。 「どっちでもやだって言ったら?」 「それは困りましたね」 困っているのは口先だけで、司祭は唇が触れ合う程度の口付けを修道僧に送る。 「人がいるかもしれないよ」 「大丈夫ですって、暗くて何も見えやしません」 額に、鼻筋に、頬にと口付けを落としていく。 「…どうなっても知らないから」
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