夏を抱いて
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柔らかな口づけを解くと、そらさんは、甘い、と笑った。
「夏子ちゃん、甘くておいしい」
笑んだまま身を屈め、甘さを確認するかのようにもう一度唇を触れ合わせる。
穏やかで優しくて、甘いキス。
胸がふわっと、あたたかくなる。
「甘すぎましたか?」
「ううん、そんなことないよ。オレ、この位の甘さが好き」
よかった、と呟けば、ありがと、と抱きしめられた。
傍らのテーブルには、白いクリームで飾られたケーキ。
小さめのホールケーキは4つに分けられ、その半分が食べられるのを待っている。
「夏子ちゃん、ケーキ作るの上手になったよねー」
「ふふっ。昴さんに鍛えられましたから」
腕に閉じ込めた私をあやすように揺らすそらさん。
笑ってそらさんの肩に額をつけると、ちゅっと髪にキスが降りた。
今日で何度目だろうか、そらさんのバースデーケーキを作るのは。
来年も作ります、と約束すると、うん、楽しみにしてる、と、抱擁が強くなった。
あたたかい腕の中でそっと目を閉じる。
胸に寄せた頬から伝わる、確かな鼓動と体温。
そらさんにぎゅっとされるのが、好き。
守られてる、と安心して、愛されてる、と幸せになれるから。
私が初めてそらさんを抱きしめたのは、そらさんが笑うしかできないほどに傷ついた時だった。
ぽたぽたと首筋に落ちた涙を思い出すだけで、今も苦しくてしかたないけれど。
「大好きです」
溢れる想いを口にすれば、胸が切なく震える。
大好き、ともう一度呟いたそれも、なぜか滲んだ涙も、強く抱かれてそらさんの服に吸い取られた。
離れている時、会いたいと願う時、思い出すのはそらさんの笑顔。
何度も何度もそらさんの優しい笑顔に励まされた、勇気を貰った。
あなたの笑顔を見るだけで幸せになれた。
眩しい笑顔の似合うあなたにはいつも笑っていて欲しい。
楽しいこと、嬉しいこと。きらきら輝く幸せだけが、あなたに訪れて欲しいけれど…
また夏が来た、海に消えたあの人の安否は未だ分からない。
古い傷の残る背中に、そっと手を回す。
もしもあなたが傷ついたなら私が何度でも抱きしめるから。
例えみんないなくなっても私は傍にいるから。
何があっても、私はあなたを愛し続けるから…
「そらさん、」
「ん…?」
「生まれてきてくれて、ありがとう」
夏の星座を教えてくれたあなたは、私に愛するということも教えてくれた。
慌ただしく過ぎていく日々に大切なことを忘れそうになるけれど、あなたを想う気持ちは、いつもこの胸の一番深くにある…
「そらさん、大好き」
背中に回した手でそらさんの服を握る、そらさんは何も言わずにぎゅっと抱きしめてくれる。。
悲しくはないのにやっぱりなんだか泣きたくなって…
そらさんの左胸に、そっと口づけた。
晴れの日も雨の日も雪の日も朝も夜も、あなたが笑顔でありますように。
あなたのこれからの一年が、幸せに満ちた日々になりますように…
Happy birthday SORA!
I wish you many happy returns of the day!
I wish you many happy returns of the day!
End.
やさしさで溢れるように/JUJU
Byゆり