A brief summer respite
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茹だる様な暑さが続く、8月。
快適温度に設定されたリビングのソファで、本を読む傍らで俺の膝を枕にして眠る夏子。
「…」
寝顔を盗み見れば、何やら口を動かしているようで。
「フッ…夢の中でも何か食ってるのか?」
サラサラの髪を梳くように撫でれば、気持ち良さそうに顔を綻ばせる。
「昴さん…」
「ん?」
「…ふふっ」
「…寝言か」
「ふにゃん!」
「…どんな夢見てんだよ?」
忙しさにかまけて、今年の夏はどこにも遊びに連れていってやれていない。
そんな中、久しぶりに会うことができた貴重な休日。
どこへ行くわけでもなく、ただずっと。
部屋でゆっくりとした時間を過ごしている。
(なんっつーか…こういう時間、いいもんだな)
休みだから、デートに出掛けるのが当然というワケでもなくて。
こうして、ただ部屋で同じ空間にいて同じ時を過ごす。
そんな、当たり障りのない一日がかけがえのないほどに幸せで。
「俺の夏休みはまだ先だけど、ちゃんとどっか連れてってやるからな?」
そう、眠り姫に宣言をしてパタンと本を閉じる。
「…少し休むか……」
そっと目蓋をおろして見る夢は、すごく穏やかで温かいものだった。
「ん………」
どれくらいそうしていたのだろう。
「夏子?」
「あ、起きました?」
目蓋を開けば、微笑む夏子が下から俺を見上げている。
「ああ…俺、寝てたのか」
「ふふっ、何か良い夢でも見ました?」
「んー…覚えてねーな」
くしゃくしゃと、頭を撫で回せば楽しそうに笑う夏子。
「夏子、もう少ししたらドコでも連れてってやるから…」
「へ…?」
「せっかくの夏休みなのに、ドコにも連れてってやれてねーだろ?それなのに、今日は家でのんびりしてたら終わっちまったし」
「昴さんの寝顔が堪能できてラッキーでしたよ?」
「あのな…」
「ふふっ。でも、楽しみにしてますね!」
「…ああ」
遅めの夏休みの過ごし方を、二人で計画するそんなひと時。
「でも…こうやってお部屋でのんびり過ごせる夏休みも幸せでいいですねー」
「ああ、そうだな。…お前となら、そう思えた」
「ふふっ、それならよかったです」
夏子と過ごす休日は、夏の疲れも吹き飛ぶほどに癒される一日になった。
*END*
ByみかんC:*orange theta*