棒アイス  byきさら



後半は(2ページ目)微妙に裏です。
あくまでも微妙に、です。
裏みたいな描写はほんの少しです。
しかし、少しの裏もダメな人はブラウザバックお願いします。
微裏程度なのでパスは無し、としています。









風呂上り、扇風機の前を陣取り手にしていたアイスキャンディの袋を開ける。
冷凍庫から取り出したばかりの薄い水色したソーダアイスは、その周りにうっすら冷たい霧のような煙を発していて見るからに冷たそうだ。
ニコニコと一口、それを齧る。
一口齧れば口の中がひんやりとすると同時にスキッとした甘さが広がり、嚥下させれば風呂上りで火照った身体が一気に冷やされていく気分になる。
扇風機の風も気持ちがいいのだが、こう内部から冷えていく感覚にルフィは、
「やっぱ夏の風呂上りのアイスってたまんねぇなぁ」

胡坐をかいて扇風機の風をその身一身に浴びながらしみじみ唸る。
その姿はまるで、一仕事を終えてビール片手に唸る中年親父の様だ。

「ルフィ、オヤジみてぇだな」

「あ゛ーーーーー?」

エースの呆れたような声に、扇風機に向かって「あー」と声を出しながら振り返る。
ブレてガラガラ声に聞こえるのが面白いらしい。
そうやってアイス片手に遊ぶ姿はオヤジじゃなくて、ただの子どものそれだ。
前言撤回だな、とルフィの姿を見つめ、肩を軽く竦めて短く息をついた。

「……しっかし。
おまえの場合、アイス、いつ食ってもたまんねぇんだろ」

「ほんなほとへぇぞぉ」

「何言ってるか、わかんねぇ」

アイスを口いっぱいに頬張るルフィに、エースは口端に微苦笑を溜めた。

ルフィが目の前を陣取ったお陰で風が一切来なくなった扇風機の元へ行き、その位置をずらす。
全体に満遍なく風が来る様に扇風機の向きを直しても、一番風が当たる方へとルフィは身体を移動させるから全く意味がない。
何回かその行動を繰り返した後、いいかげんにしろ、とエースは頭に軽くゲンコツを落とすとルフィはへへへ、と悪戯っ子の様に笑う。
その笑顔にエースは、「ったく、仕方ねぇなぁ」という意味の溜め息を身体の奥の方から吐き出して、ルフィの頭に落としたままのゲンコツを広げ頭をクシャクシャっとぶっきらぼうに撫でてやった。

「今日何本目だ?いいかげん腹壊すぞ」

「腹丈夫だから問題ねぇ」

そういうもんかね、とエースは幸せそうにアイスを食べるルフィを見つめながら、小さく細い息で笑った。



☆☆☆



「おれさぁ」

「ん?」

「棒アイスって一番最後の部分食うの下手なんだよな。
だいたい失敗する」

そう言って、食べていたアイスを目の前で揺らす。
もうアイスはルフィの食べ方で考えると、ほんの一口程度しか残っていない。

「一気に食えばいいじゃねぇか」

棒の部分が喉に引っかかりそうな気もするが、一気に口に入れてすぐにアイスの部分を齧りスライドさせれば、棒から外れ上手く食べれそうな気がするのだが。

「まぁそれもそうなんだけど。
堪能したいじゃん?」

「そこまで一気に食っといて何を言う」

その状態に持っていくのに、およそ3口程度。今食べているものはそれなりの大きさでもあるし、普通は冷凍庫からだしてすぐのアイスキャンディなんてだいぶ固くて齧って食べる事なんて出来ないものだが、ルフィはそんな事はお構い無しだ。
ちまちま舐め溶かしながら齧る、なんて事はせずガブっと齧りつく。
そんな風に一気に食べるから食べ終えた後、「物足りない」といった言葉をいつも発するルフィが、「堪能」なんて言葉を言うのはいささか間違っているような気がして、エースは呆れ顔で笑う。
当のルフィはエースの言葉を無視して、どうやって食べるか……しばし考え、おもむろに棒を横にして上半分に齧りついた。

「……っと」

上半分が無くなったアイスは支えを失った様に棒から外れて、落ちる。
咄嗟に手のひらを落下予想地点へと出すが、ほんの少し手のひらに触れただけでその上に乗る事はなかった。
落ちたアイスは吸い込まれる様に、そのままルフィの服の中へ。

「やべ、落ちた!つめてぇ!」

「何処落ちた?」

「服ん中!早く取らないと溶ける!ベタベタになる!」

タンクトップの首周りをグイっと引っ張って覗き込んだり、裾をバタバタしたりするが、アイスの行方は分からない。
ほのかに冷たさはあるのだが。
アイスを食べたり、扇風機で身体を冷やしていたとはいえ、夏場の風呂上りのルフィの身体は一気に冷える事もなく未だ微かに熱を持っている。
落ちたアイスはそれなりに大きかったのだが、身体の熱でもう溶けてしまったのだろうか…?

――いや。

いくらなんでも、そこまで早く溶けるわけはない。
溶けるわけはない筈なのだが一向に見当たらず、ないない、と騒ぐルフィに意地悪な笑みを湛えたエースがゆらり、近づく。

「おれが取ってやるよ」

「いや、いいから…」

なんとなく嫌な予感がして、片手でエースを静止しながら座ったままズリズリ逃げるルフィだったが、バランスを崩して床へと倒れこむ。

「って!エース!」

倒れこんだところ、すぐさま覆い被さるようにエースはルフィの膝を割って入る。そしてルフィのタンクトップの裾に手をかけた。
上へと捲くろうとする手を押さえたり足をバタバタさせたりしてどうにかして拒否をするが、さすがのルフィもエースの力には敵わない。
エースの手を押さえている手ともう片一方の手。
手首を掴まれ一纏めにされ、頭上で押さえつけられた。

「まぁ任せろよ」

グイっと、タンクトップが一気に鎖骨付近まで捲し上げられ、ルフィの程よく筋肉がつき少し日に焼けた健康的な肉体がエースの目の前に曝け出される。

「さぁて、どこかねぇ」

物は見当たらないが、確かにアイスが身体を通った形跡がある。
エースは、スゥ‥‥と指の腹を滑らせるようにその跡をなぞった。

「触る必要ないだろっ」

「なぞんねぇと、わかんねぇんだよ」

「意味わかんねぇ、離せよっ」

「まぁ、お兄ちゃんに任せなさい」

「マジ意味わかんねっ……!!!」

やめろ、やだ!と暴れるルフィをよそに、まじまじとその身体を眺めながらエースは口端を弓形に吊り上げた。



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