小説 | ナノ

師弟関係


「もっと自分を大切にしろ、名前」
師匠がドラマに出てくる説教くさいオジサンみたいな陳腐な事を口走った。

ここは坂田師匠の部屋で、
私は師匠に超能力の特訓をして貰ってる弟子で、
今日も特訓をするはずだったんだけど、
今こうしてベッドの上で師匠に迫ってフラれたことろだ。

「師匠、どうして?」
壁際に追いやられ逃げ場をなくした師匠の膝にまたがる。
「私、ずっと抱かれたかったんだけど」
首に腕を回して顔をのぞき込むと、師匠はフイッとそっぽを向いた。

「師匠は私のこと嫌い?」
甘えた声を出してみる。
こうすると師匠はいつだって「しょーがねえな」と呟いて
私の言うなりになってくれた。
だけど今日は歯切れが悪い。
うむむと唸って考えあぐねた顔をする。

「名前、あのな、さっきも言ったけど……」
師匠は私をなだめる時、決まって小さな子に物を教えるみたいに
優しく噛んで含めるような言い方をする。
「俺、医者に内臓ボロボロで長生きできないって言われたんだよ。
 俺の内臓、老人並みなんだとよ」
それはさっき聞いた。
人間ドックに行くって事も前もって聞いてた。
勿論忘れたわけじゃない。

「精力も老人並みで勃起できないってこと?」
「バッ……!お前、なんつー言葉を!!」
「じゃあ何よ。できるんならしようよ。それとも嫌なの?」
「嫌とかそういうんじゃねーよ」
師匠はハーッと大きく溜め息をついて、
首に絡んだ私の腕をそっと振りほどいた。

「先が長くねえってわかっていながら、
 無責任にそーいうことできねえだろ」
師匠は今まで決して外したことのなかったサングラスを
おもむろに外して、説き伏せるように私の目をじいっと見た。
「俺とお前がそういう仲になったら、
 俺が死んじまった時、お前辛いだろ?
 女残して死ぬのとか俺だって嫌だしよ」
そんな言い方されたら、師匠だって私のこと
まんざらでもないみたいに聞こえちゃうじゃない。

初めて見る師匠の目は優しさと厳しさを兼ね備えた
師匠の性格がそのまま表れたような、そんな目だった。
私の大好きな師匠そのものだった。
出会ってから今日までのことが一瞬で頭の中に甦る。
どの瞬間を思い出しても、全ての瞬間の師匠が好きだと気付いて、
ますます自分の気持ちに歯止めがきかなくなった。

「師匠!」
師匠の胸に倒れ込むみたいに勢い良く抱きついた。
「もし明日師匠が死んじゃったら、
 やっぱり私、抱かれたかったって後悔するよ。
 好きな人のカラダがどんなだったかって
 知らないまんまなの寂しいよ」
ギュウッときつく抱き締める。
胸が圧迫されるほど密着する。

観念したのか、フッと肩の力を抜いて、
抱きつかれるがままで師匠が言った。
「俺は好きな女のカラダについて1つ知ってるぜ」
「……何?」
「お前は着痩せして見えるけど、意外とおっぱいがデカい」
「ちょっと、師匠」
プッと吹き出すと師匠もニヤリと笑った。

「本当に俺でいいのかよ」
「師匠がいいの。好きなの」
「どこがいいんだか」
「わかんないけど、全部好き」
「惚れた女にそこまで言われちゃ引き下がれねえな。
 お前に胸押しつけられたおかげでちょっと勃っちまったし……」
師匠のチノパンの股間の部分が少し膨らんでいた。
「全然元気じゃん」
「ああ、そこんとこはな」
「じゃあ、して」

師匠がうーんと困ったように唸った。
「やっぱダメだ。ゴムがない」
「え、うそっ」
「だってしばらく使う機会もなかったし、
 まさかおまえとこうなるとは思ってなかったしな」
そうは言っても、男というのは万に一つの可能性に期待して
用意しとくもんだと思っていたけど、
師匠はそんな下心は毛ほども持っていなかったのだろうか。

「今まで何度も師匠の部屋に来たことあるけど、
 一度もそーいうの考えたことなかったの?」
誠実だと思えば嬉しいけど、女としてはちょっと寂しくもある。
師匠はバツが悪そうに視線をそらして、ボソッと言った。
「まあ、ちょっとはスケベ心がないわけでもなかったけど……。
 でも想像はしても、実行する気はなかったし」
「私とセックスしたいって考えたことある?」
「正直言うと、何度も押し倒しそうになったことはある」
照れなのか、不貞腐れたように言う師匠が可愛い。
私は嬉しくなって、ますます師匠に抱かれたいと思った。
「じゃあ、しよ!ゴムなくていいから」
「でも、お前……」
「お願い。して。我慢できない」
師匠は頬を赤らめて、鼻の頭をポリポリと掻いた。
「最初がこんなムードも何もないカタチになっちまうなんてなあ」

私達は声を揃えてクスクスと笑った。
笑い声が止むと、唇の合わさる音に変わった。
チュッ、チュッという音が耳にくすぐったい。
「ん……師匠……」
ずっとこうしたかったという思いが溢れてきて、
キスだけでじわりと下着が濡れていくのがわかる。
「お前、そんな声出すんだな」
キスの合間に師匠が囁く。
「もっと聞きてー」

首筋に唇が這う。
「あっ……」
耳たぶを舐め上げて、甘噛みされる。
「んっ あぁっ……」
服の裾から師匠の手が滑り込んでくる。
ブラジャーを外して、軽く胸を揉まれた。
「その声、すげえそそる」
Tシャツを捲り上げて、乳首に吸いつかれた。
「あんっ 師匠っ」
舌先をチロチロと動かされて、
気持ち良くて下半身がムズムズとする。
「感じやすいんだな。可愛いやつ」

乳首を舐め回したり、歯を立てたりしながら、
師匠は私のショーツの中に手を入れた。
クチュッと厭らしい音が立つ。
中指を上下に動いて、クリトリスを探し当てられた。
そこへ触れられると、背筋が痺れたみたいにビクッとした。
「はぁんっっ」
思わずおかしな声が出て、慌てて口をつぐむ。

優しく円を描くみたいにクチュクチュと弄られて、
唇をギュッと噛んでいても声が漏れてくる。
「ふぁっ……んっ やだっ 気持ちい……」
乳首を舐めながらクリトリスをいじられて、
気持ちよさで頭がおかしくなりそうだった。

「やっ あっ 師匠、いきそ……」
身を捩る私を押さえつけるようにキスして、
師匠はいっそう指の動きを速めた。
「あっ ダメっ いっちゃう……ああんっっ」
仰け反って、爪先や肩がピクピクと痙攣する。
絶頂の波が引いていくまで待って、
それからチュッと軽くキスしてくれた。

「師匠、今度は私がしてあげる」
私は入れて欲しくてたまらない気持ちをおさえて、
「そんなことしなくていいって」と言う師匠に
仰向けに寝てもらうよう促した。
「師匠の、舐めさせて」
ベルトをはずし、チノパンを脱がせ、
それからはちきれそうになったボクサーパンツを
ドキドキしながら脱がせた。

飛び出すようにして出てきた師匠のペニスは結構な太さがあった。
おなかにくっつきそうなくらい上を向いて勃っていて、
なんだか愛しくてたまらない気持ちでそれを咥えた。
亀頭をぐるりとひとまわりするように舌を這わせて、
それから裏筋をそーっと舐め上げる。
「うっ」
師匠は短く声をあげて、ペニスがビクッと動いた。

「気持ちよくなって」
根元を握ってしごきながら、カリ首あたりまでを咥えて舐め上げる。
大好きな人のモノが私の口の中でさらに大きくなる。
師匠が感じてくれていると思うと、私も興奮する。
もっと気持ちよくなってもらいたくて懸命にしゃぶる。

「うっ……くっ……ちょ、ストップ、やばい」
ポンポンと優しく頭を叩かれて動きを止めて師匠の顔を見る。
「気持ち良過ぎて出ちまいそう」
「いいよ、口の中に出して」
入れて欲しいけど、でも師匠が私のフェラチオでイッてくれるのも嬉しい。
だけど師匠は私の髪をグリグリと撫でて、
体勢を反転させるように、今度は私を仰向けに寝かせた。
「それも嬉しいけど、やっぱりお前と一緒にイきたい」
「……うん」
照れながら笑うと、師匠の太いペニスがゆっくり私の中に入ってきた。

もう充分濡れていたから、スムーズにつるんと奥まで入った。
師匠のペニスの動きに合わせて、背筋が粟立つような快感が走る。
「ハァッ ハァッ 師匠……ああんっ」
抑えようもなく喘ぎ声が出てしまう。
AVを観るたびに大げさな演技だってしらけていたクセに、
自分もあんな大げさな声を出している。
でも本当に好きな人と繋がれて本当に気持ち良いと、
他の事すべてどうでもよくなって、
今もっともっと気持ちよくなれるのなら
後はどうにでもなれとすら思えるみたいだ。

「師匠っ 好き……大好き……」
おなかの底からジワジワと熱い塊が広がってくる。
「ああっ……師匠っ……愛してる」
頭の芯がじんわりと痺れ始める。
一番気持ち良い瞬間に堪えるように、
師匠の背中に回した指先にグッと力を込める。
「研…三っ……愛してるっ……」
腰の動きが早まる。子宮口をガンガンと突いてくる。
「名前……俺も……」
「ああっ……も……ダメッッ」
「好きだ 名前っっ……クッ……」
大きく最奥を突かれ、頭の中が真っ白になる。
体の隅々にまで緊張が走り、快感に支配される。
おなかの上に生温かい感触。
師匠の精液が何度かに分けて放出された。




「初めてお前に名前呼ばれたな」
「だって、もうただの師匠と弟子じゃないでしょ?」
「……しばらく死ねねーな、俺」
そう言っておでこにキスしてくれた。
「エッチする前よりもっと研三のこと好きになっちゃったから、
 ずーっと死なないで、そばに居て」
師匠は私をギューッと抱きしめた。
「なんだよ、可愛いな。もう一回するか?」
師匠と弟子じゃなくて、最初からずっと恋人同士だったみたいに、
私達は指を絡めあって、何度もキスをした。





(あとがき)師匠かっこいいですよね。桜井になりたいって思いながら原作読んでました。



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