空白





治ったらちゃんと…。

そんな彼の言葉はどうしてこう様変わりしたのだろう。

スケジュールを押さえられ、彼の一番の部下が運転する車で連れてこられたのは、山間の大きすぎない高級ホテルだった。
車内では誰も話すことはなく、私は彼の部下がこの状況をどう理解しているのかだけが気になっていた。
この関係はずっと隠してきたものだったから。


そして今、彼と食事をすると言う奇妙な光景に自分が組み込まれている。



「どうして?」

たまらずに、先に口を開いたのは私だった。

「ここ覚えてない?」

「よく似たようなところに仕事で行くから」

「それはさびしいね」

彼は笑い、1年前の今日、このホテルに共同任務で来た時が初めて関係を持った日だと教えてくれた。
もう1年?まだ1年?

「覚えてるとは思ってなかったよ。僕も書類の整理をしていてたまたま気付いただけだしね」

「あの時の私は酔ってたから。あなただってあんなにシャンパンを飲んでたのに…」

「僕は洋酒は飲まないから、トニックウォーターにレモンを搾って貰ってたんだ」

「ずるいわ」
あの時の私は、ちょっと彼と張り合っていたのだ。
まだ、彼と骸様との確執を上手く処理出来ずにいたから。

「そうだね。でも、そうでもしないと、この関係はなかったよ」

「あなた、思い出話をしにきたの?」

「いや、それだけじゃなく君と泊まりに」

「勝手ね。喜ぶと思った?」

「勝手なのは君の方だよ」

「………」

「いつまでこんな遊びを続けたいの?」



私の胸が一際跳ねた。
この瞬間がいつかは来ると分かっていたのに…。




to be continued...



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