侵蝕




互いに久しぶりに帰国し顔を合わせると、視線で合図し誰にも見つからないように、翳りゆく部屋に消える。


彼が適当な場所に座りジッパーを下ろす。その合間に私は膝に上がり下衣を下ろす。

後はただ、何も考えず仕事で離れていた間に押し留めていた欲求を満たし合うだけ。

何かを約束した関係ではないが、互いに他の相手を作るつもりもないのは何となくだが、承知していた。
こんなに都合の良い関係はそう簡単には作れないだろうから。
仕事柄ではなく、人間性と言う意味で。


ただ下半身でだけ繋がっていればいい。
それがルールだ。
しかし、今日の逢瀬は私がカジュアルダウンしている点から違っていた。


彼との情事のときは常にスーツにYシャツだったが、今日はスーツより柔らかいジャケットにニット素材のトップス。


私の中に入って、突き上げながら彼の手が私の腰を揺すると、自然と服が捲れ上がり素肌に触れられることになる。


彼のその手が腰から背中を這い、次の瞬間には服をたくし上げられ胸の膨らみをやんわりと包まれていた。


新たな快感に腰をくねらせると、彼がますます深く侵入して、その刺激にまた私が悶える。

シンプルでいたいから、極力肌を重ねたくは無かった。
だけど、胸の頂を摘ままれ私の背がまた跳ねる。


必要がない、と抗議する暇もないし、そもそも、言葉を交わすのも私たちに必要はない。


軋む椅子の上で震える身体は、また新たな甘さを知ってしまった。

快楽を得るには下衣を下ろすだけで充分なの。

こんなもの知りたくなかったのに、胸に感じた熱い彼の舌の感触に、私は短い悲鳴を上げ、膣控を収縮させた。


この甘さに蝕まれていく事がこわい。







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