「何が食べたいの?」
「私は、要らないわ。恭弥は?」
「何それ。君が食べたいから頼もうと…あぁ、腹いせか」
「もぅ、繰り返さないで」
彼女はまたムッとして頬を膨らます。
そんな彼女を見て、僕は赤み差すその頬に軽く触れると、彼女のためにフルーツの盛り合わせとグァバジュースを注文してあげた。これで少しはビーチ気分にもなるだろう。
今がもう夜だからか、それともここが異国だからか、いつも心の根底にある彼女への警戒心や僅かな敵愾心が薄れ、解放的になっているようだ。
「凪」
「何?…!きょ、恭弥!?」
そして、今は時差ボケもある。いくら僕でも、この手の問題、殊睡眠に関しては、強くない。機内で寝たり起きたりを繰り返したこともあってか、不思議な浮遊感があった。
「眠い気がするんだよ。おいで」
彼女にまた触れたい気がして、手を伸ばすと、両腕が勝手に彼女を捕まえてソファに引っ張っていた。
睡魔は警戒心を解く。
「恭弥、ちゃんとベッドで…」
「仮眠だから」
「でも…」
膝枕じゃなくても…。
困惑仕切った声で彼女が呟くのが聞こえた。
耳まで真っ赤になっている、に全財産をかけてもいい。
そう口に出して言ったか言ってないか自分でも分からないところで、僕は眠りに落ちた。
僅かな気配でも眠れなかった僕はどこに行ったんだろう。
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