Heaven's kitchen : on a table
心の中で口付けや抱擁を乞うのに、彼女には通じない。
鈍いところも嫌いじゃないけど、これでは僕が可哀想だ。
彼の思考を読めていたら、彼女は少なくともその場からは離れられたはずだ。
「あ、アイス食べちゃったんだっけ?」
ついさっき冷蔵庫を開け放してはいけないと言った彼女なのに、今度は自分が冷凍庫の引き出しをずっと探っている。
「探してもないものはないよ」
そんなにアイスが欲しいの?と呆れたように問う彼。すると、即答でイエスと返ってくる。
その早さに何だかムッとした。
アイスが欲しいのなら冷えた手は欲しくないかい?
自分のすぐ後で、いたずら心と呼べるほど可愛くはない企みが芽生えているのを、彼女はまだ知らない。
風呂上がりの潤いで身体に張り付く薄手のシャツは、背中の中央に伸びる流線を浮き立たせている。
下着が隠れる程度の丈をしたショートパンツからは、すらりと白く細い脚がのびていて…。
ふっ、っと聞こえない程度にそっと息をつく。
彼女が悪い。僕に背後を取らせるから。
なかなかアイスを諦めない彼女の後にそっと近寄ると、ミネラルウォーターのペットボトルで冷えた手を、腿の隙間に忍ばせた。
すると、声にならない小さな悲鳴とともに彼女の背が、はねる。
「恭弥っなにする…の」
「まだ甘いよ」
「きゃっ」
今度は彼が冷凍庫を閉める番だった。それに抗議しようと彼女が振り返った瞬間、腰を抱き上げてキッチンテーブルに運ぶ。
まるで豪華な晩餐だ。
まぁ、僕にとってはそうなるんだけど…。
彼の目が、不敵な思惑に揺らぐのを見た彼女は、本能的に後に逃れようとするも、それではますますテーブルに上がるだけで、もう、逃れようがない。
「やだこんなとこ…」
「ダメなのは場所?だったら、別にいいじゃない」
「よくな…あっ」
先ずは落としてしまう方がいいと踏み、何の躊躇もなくシャツをたくし上げた。露になった胸の小さな突起は綺麗な桜色をしていて、これなら桜も愛せるのにと馬鹿な事を思う。
「やだ…ん」
シャツを下げようとする彼女の動きを止め、腰に腕を回して逃れられないようにする。それから、その愛らしい唇を舐めると、呼吸に合わせ上下する胸の蕾に唇を寄せ、柔らかくそれでいてしっかりとした感触を楽しむ。
それから、一気に口に含んだ。
彼女の背が大きくしなる。
「君、弱すぎ」
「んん…」
親指の腹で胸の突起をいじりながら、耳元で囁く。
彼女はぷるぷると首を振り、左手で胸を押して離れようとする所作を見せる。だが、右手はしっかりと彼の首に回っていて…、そんなんじゃ説得力ないよ、と言いながらその手を引き剥がし指に唇を這わすと、だって…もう倒れちゃう、と泣きそうな顔をした。
そんなこと言われたら、倒すしかないでしょ。
続きます。
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