ボンゴレで最後になるかもしれないパーティ。
つまり、ビンディチェへと向かう私達のために開かれた壮行会には、普段は関わりたがらない犬や千種まで、食事目当てだ、と来ていてこの5年間で、お世話になった人たちが勢揃いしてくれた。

 ただ一人を除いては…。



「ボス、き…雲の人は…」

「誘ったんだけどね」


 おずおずと訊く私に、ボスは苦笑する。


「オレもクロームのためのパーティなら、あのヒバリさんも来てくれると思ったんだけど」

「あの人らしいわ」


 私は、多分淋しげに寄せてしまった眉と伏せた瞳に気付かれないよう、わざと大きくため息をついて、その場を離れた。



 私と恭弥は特別な関係と言う訳ではない。


ただ、守護者が集まると自然と私と恭弥だけが離れた場所に陣取るから、そんな事が続くと、何となく一言二言言葉を交わすようになって、友情と呼ぶには難しいけれど、確かに「ただの知人以上」の関係は築けていた。

 戦闘面では私に気付かせないようにこっそりサポートしてくれていたことも知っているし、ボスには彼への連絡役を頼まれることも段々と増えていった。
 ボスは何となく分かっていたのかもしれない。



でも、特別な関係じゃない。



去年のクリスマス、僕たち宿り木の下にいるよ、と誰にも気付かれない場所で、恭弥は私にキスをした。
軽く触れる程度で、数秒もなかったけれど、コーヒーの味を感じた。驚いて意味なんか考える暇がなくて、私はただ、彼の言葉を額面通りに受け取ったんだった。



特別な関係じゃない。






 それから、誰にも言わずパーティを抜け出した私は、自分の部屋のシャワーに直行する。
 纏っていた服を脱ぐのが億劫で、まだ暖かくなっていないお湯を頭から被ると、両頬だけに生温い感触を覚えた。


…恭弥。


 今度はいつ会えるのか、会えると言う保証さえない。



「私、泣いてる…」




 そうか、私……。



 気付いてしまった。気付きたくなかったことに。

 身体に張り付いた服が気持ち悪い、と冷静に考える。気持ちを持っていかれたくない。
 明日は日本を立つ大事な日なのに…。


 神様お願いします。この気持ちをシャワーで全部流して下さい。


だけど、その前に一度だけ言わせて。


一度だけ。


届くはずもないけれど…、恭弥。











「すき」














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