団子屋の娘夢主

団子屋の娘な夢主

店仕舞いの時間まで、あと一時間ほどの際どい時間。
例の詰め襟の物騒な服を着た静かな男の方はまた、今日も来られない。
店の中のものはほとんど売れてしまっているから、私は暖簾を下ろそうとしてた。


すごい強い風が吹いたから、思わず暖簾を取り落としそうなったら、詰め襟の例の男の方が助けてくれた。
見かけによらず、優しい方なのかも知れない。
そんな失礼なことを考えつつも知ったのは、その日が始めであったと思う。
それまでのこの詰め襟の方の印象は、一貫している。「おはぎの方」だ。

「ありがとうございます」
って言うけれど「いや」とだけ言って、詰め襟の方は言いにくそうにまごついて「もう終いかァ?」って聞いてきた。

「おしまいなんですけど、おはぎ二つだけならありますよ」って笑ったら、キョトンとする詰め襟の方。

「いつも終いまで取っておいて、私が食べるんです」って付け加えたら、合点って顔して「なら、今日は」って遠慮して踵を返そうとするから、ちょっと慌てて「詰め襟さんが来られると、いつも頼まれるでしょう? だから、取ってあるんですよ。そろそろ、私飽きちゃいました」って言った。

そしたら、ちょっとだけほっぺたを赤くした詰め襟さんが暖簾を持ち上げて、「これ、中に入れるんですか」って言って暖簾を持ち上げて誤魔化すみたいに聞いてくる。

「お願いします」ってちょっと頭を下げてから、「お礼におはぎ、いかがですか」って言うと、少しだけ鼻で息を吐くみたいに笑ってから「そういうことなら」なんて返してくれた。

お店の奥の方のお席に着いた詰め襟の方は、小さく見える引き結んでいたお口を「あ」と大きく開き、菓子楊枝で半分にしたおはぎを頬張った。

頬の片側をぱんぱんに膨らませた様は、まるでそこいらの童のようで、見ていると自然と口元が緩んでしまった。
目元が緩んだ詰め襟の方は、小さく小さく「うめぇ」と呟いていたと思う。



なところから始まる、プラトニックなラブストーリーとかすごい素敵。
きっとずっと通ってくれるし、しばらく来られないの確定してるときは持ち帰りしてくれると良い。
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