お友達になろう!



ある日、授業が終わり、後藤と共に部屋へ戻ると――

「よぉ渚元気かっ?」

――見知らぬ金髪が居た。

(なんだこの、関わったら絶対に後悔しそうな不良は…!)
「おぉ隼人!久しぶりじゃん」

俺の横から顔をぬっと出してきた背の高いアホ。
(やっっぱり後藤の知り合いかよ…!)

後藤と俺は長い付き合いで、小学生の頃からずーっと同じ学校に通ってきた。
だからだいたいの知り合いは共有しているんだけど、中学生になって突然…まぁもともとそんな空気を兼ね備えていたんだけど、とにかくグレちゃった後藤とはクラスが違うときもあったし、俺があんまりそうゆう奴と絡まないようにしてたのもあるんだけど、まぁわかりやすくいうと

後藤の不良友達を俺は知らない。

「なー!お前お坊ちゃま校行ったからどーしてんのかと思ってたんだよっ」

にぱっ、と周りに花が咲く勢いで微笑んだ金髪さん。俺の金髪へのイメージが悪いのかもしんないけど、思ってたよりもこの人綺麗な顔してるよ。

「……」
(…というか俺の存在はスルーなんですね。はい。)いいよもう悪かったな影薄くて。

「相も変わらずフェロモン振り撒いてんなァ隼人は。」
「あ!啓太!」

ぐるりっと俺が振り返ればまたまたどでかい金髪。

「お前、どうやって入って来たんだよ。この学校結構警備厳重だと思うけど?」

ニヤリと悪い笑顔を口元に浮かべて、長谷川はハヤトと呼ばれた金髪に問う。

「まーなー。壁よじ登るのも疲れたけどよ、でっけぇ犬がマジ怖くてビビったー」
(犬?!)
「なんでまた会いに来る気になったんだよ?…ん?」
「何?」
「お前、鞄から出てる黒いの…なんだよ」
「くろいのって、!、わー!!やめろぉお!」

ハヤトさんは自分の鞄のほうへ伸ばされた長谷川の腕を掴み肩にかけてからぐるりと体を反転させ、
――長谷川の体が浮いっ…
ダンッッ!
と大きな音が響いて、ぐらりと部屋が揺れる。

「ぃっ…!ってぇ!」

ばちりと見開いた長谷川の目には涙が浮かんでいるのではとすら思えた。

(ぃぃい一本背負い!?)
「あ、わ、悪ぃ啓太っ!大丈夫か…?」
「大、丈、夫だ…あは、は」

床に沈んだ長谷川はぴくぴくと揺れる。だめだこりゃ。
体格的には圧倒的に長谷川のほうが勝るのに、こうもあっさり投げられるなんて…さすが後藤と長谷川の悪友、といったところですか。

「その黒いのなんだよマジでー」

後藤が隼人さんに詰め寄る。

「なんでもないってカツラとかじゃないし!…あっ」
(カツラ?)

思わず彼の頭部をチラ見。別に異常はなさそうだけど。

「カツラとは言ってないだろぉー。早く見せてみろって」
「なんでもないからホントにっ!変装とかそんなことこの俺がするわけねぇじゃんあははっ」
(変装?コスプレとかじゃなくて?)

「変装?…お前、一体どんな学校生活送ってんだよ」

ぴり、と長谷川の眉間に割れ目ができる。
(おぉ)

長谷川がちゃんと怒ってる感じだ。隼人さんってほんとにすごい人なんだなぁと感心してしまう。

「べべべ、べっつに普通、だよ、うん」
「本当か?」
「あ、あぁ」

長谷川が詰め寄れば隼人さんは逃げるように顔をそらした。

「――…あの」
「お前ら、他校の生徒を連れ込んでるらしいな。」

空気が凍った。
ぱきんっと一瞬で。頭上から落ちてきた彼の低い小さな声は小さな寮室に轟き渡った。他の人だったらごまかすことは出来たんだろうけど、俺達はとことん運が無かったらしい。

「うげ。桜場っ」
後藤はわかりやすく『しまった』という顔をつくった。

「え、教師!?」
隼人さんも桜場を見上げた。

「………………清水」
「はいすみませんごめんなさい」

 後藤も隼人さんも勇気あるなぁーよくもまぁ怒ってるアイツの顔を見れるよ。俺はオーラと視線と声だけで動けません。

「お前がついていながらどうしてこういうことになる」
「し、仕方ないでしょ。後藤の友達なんだから」
「あー清水ずりぃー」
(事実だろうがっ)

「…んなことどうでもいい」

「…え?」




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