そうやって人は恋をするのだ。



ぱちん と音がなった

聞いたことのない音だったから俺はかぁっと頬を赤らめた。
心臓を直に握られたようなこの感覚はなんですか

おぉもしかして俺今浮いたりしてないか
大丈夫か
こんなにくるしいのになぜ口元が緩んだりするんだろう

「どーかしたの、お前」
くっ、とへんな笑い方。疼くように胸が高鳴る。
「はやく行こうぜ」
立ち上がったお前の背中が、昨日よりずっと遠くに見える。なぜだろう。

お前が名前を呼ぶ。嬉しい。
お前が笑う。俺も笑う。
お前が嫌味を言う。腹が立たない。
お前が遠くを見てる。寂しい。
お前があの子を見てる。
お前が呼んでも気づかない。
おまえがやくそくをやぶる。
おまえがわらう。くやしい。


見慣れた帰り道が、何故か無駄に広い。お前が居て見えなかった右側に、黄色い花が咲いていた。
『わりー、俺一緒にかえれねーわ!』

「なにも、そんなに…」
嬉しそうにしなくたっていいだろ、なんて


「っなにも…こんなに…っ」

好きにさせなくてもよかっただろ、なんて

友情と、愛情を取り違い、
勝手にひたすら片思いなんて、ばかげたやつのすることだ。


あした俺はお前に笑ってやれるだろうか。今はそのことだけが心配だよ。

知らぬ間に落ちて
知らぬ間に育てる
恋の種は涙を栄養とするのかと思うほど
報われる確率の低い賭け。

それでも、それでも
俺は

(きっと明日もお前が)









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