▽四回目 獅子原まよなか




◎世界観

人間と動物や植物とのハーフが、人間達と共存している世界でのお話。
ハーフに関しては、ハーツラグと呼ばれている。この国の言葉で、「二つの愛」と言う意味。
近未来的。科学が進歩し、発展している。


一昔前まで、ハーツラグは、畏怖、異端の対象であり、存在してはいけない物とされていた。
国のトップである人間が、ハーツラグを迫害し始めたのだ。途端に、彼ら彼女らは、住む場所を奪われ、人体実験を繰り返され、奴隷にされたり、虐殺されたりしていた。


人間はハーツラグを見下し、ハーツラグは人間を忌み嫌う。
そんな中、一人のハーツラグが立ち上がった。人間とハーツラグは、必ず分かり合えるはずだと。それにそもそも、かつては一緒に暮らしていたのだと。


長い長い時間が必要ではあったが、彼の意見に賛同する者が増えていき、やがて彼は国の選挙に出た。そうして、勝ったのだ。



それから半世紀以上経ち、差別が全く無くなったわけではないが、人間とハーツラグは共存ができている。
組織的に隠されていたため、あまり世間に知られていなかったが、ハーツラグの能力はとても高く、人間の知恵と組み合わせて様々な事業を発展させることができた。

禁じられていた、人間とハーツラグとの婚姻も出来るようになった。それによって、いわゆる共学と呼ばれる、人間とハーツラグの両者が通う学校も多く存在している。






◎お話



スキクーは、教室で目が覚める。周りを見渡すと、全く知らないクラスメイトが休憩時間を謳歌している。

クラスメイトは半数が人間、また半数には獣の耳や角が生えていたり、動物の尻尾があったり、頭から花が生えていたりする。



スキクーはそっと教室を抜け出し、トイレの鏡で自分の姿を見る。
フェネックの耳と尻尾、髪色やオッドアイには前回の世界で気付いていたけれど、瞳の奥に星を見つける。きっと星を食べたからだな、と思う。

胸元に違和感を覚えてシャツのボタンを外すと、蛍光灯に反射して淡く光る緑色の鉱石が埋まっている。これも前の世界から。



教室に戻る。隣の席はクラゲの子だった。他と比べて人間的な外見をしていて、顔や身体は普通の女の子。長めのストレートヘアがよく似合っている。

彼女は、獅子原まよなか、と言う名前らしく、黒いセーラー服を着込んでいる。プリーツの多いスカートの裾から、白く長い脚と、とうめいな触手が溢れている。が、その中にひとつだけライオンの尻尾がある。ハーツラグである彼女の、唯一の特徴だった。



一年近く、まよなかや他のクラスメイト達と、普通の高校生活を過ごす。まよなかと一番仲良くなるスキクー。


そんな中、まよなかが父親を罵る発言をしたり、ライオンの尻尾を退け、クラゲの触手だけを愛おしげに手入れしているのを見て、どうしてそんなに嫌っているのかを聞く。
すると、まよなかの曾祖父である人物が居る場所へと案内される。



まよなかの母方の曾祖父は、クラゲと人間のハーツラグ。

その中で曾祖父は、世界を変えたいと思い、人間とハーツラグは共存できると訴え続けた。
その結果、今のまよなか達がある。


まよなかはそんな曾祖父を尊敬しているが、ライオンと人間のハーツラグである父は、そうではなかった。

まるで歴史を繰り返すかのように、人間を忌み嫌い、自らの姿形であるハーツラグを崇拝し、クラゲと人間のハーツラグの、まよなかの母と結婚した。

母は、曾祖父にまよなかを会わせたがったが、父は決して許さなかった。
寿命が人間よりも長いハーツラグである曾祖父が、とうとう老いて、植物人間状態になってしまうまで。





無理矢理にでも来るべきだった。会って話したかった。歴史の資料や図書館の本なんかじゃなく、曾祖父の口から聞きたかった。それももう叶わない。
だから私は父が嫌いで、父の性質を受け継いだ、このライオンの尻尾がひどく憎いの。


病室で眠る曾祖父を見つめて、まよなかは懺悔するように呟いた。
スキクーはその話を聞きながら、わたしのタイムリミットはどのくらいなのだろうと、廻守と話した記憶を思い起こす。





ある日、まよなかは、スキクーを海に連れて行く。スキクーとまよなかは誕生日が一緒で、それの前日だった。

ハーツラグ同士の子どもである人々は、十八歳の誕生日に、父親か母親、どちらかの性質だけに移り変わる。
まよなかはクラゲからライオンへと変わってしまうかもしれないのが、ひどく恐ろしいらしい。嫌悪する父の姿に似るくらいなら、と、死を迎えようとする。


誕生日プレゼント、とメッセージボトルに入った手紙を渡すスキクーに、まよなかは笑う。もう、必要ないのにね。
クラゲの触手が二人のからだをすっぽりと包んで、そのまま海の中へ。
沈んでいくまよなかの触手と、反対に水の中でも浮かんでいるライオンの尻尾を見つめながら、スキクーは溺死した。






波打ち際で目を覚ます。
ずぶ濡れのからだは重く、触手は無い。

まよなかは生きていた。
生きて、しまった。





◎付属要素

セーラー服




◎要約

教室で目が覚めるスキクー。クラスメイトたちの中には、不思議な外見をしている子もいる。
人間と動物のハーフが、人間と共存している世界らしい。


隣の席の、獅子原まよなか、というクラゲの子と仲良くなる。
彼女はクラゲの母、ライオンの父が居て、ハーフ同士の子供らしい。ライオンの父のことは、曽祖父とのいざこざ関連でとても嫌っているようだ。

まよなかとスキクーは誕生日が一緒。共通点がある、なんて喜んでいると、どこか浮かない顔のまよなか。
なんと、ハーフ同士の子供であるまよなかは、誕生日を迎えるとクラゲかライオンのどっちかに偏ってしまうらしい。

ライオン嫌い!なまよなかは、スキクーと心中計画を立てる。
スキクーはそんな彼女のことを見捨てられず、淡い恋心さえ抱いていた。


二人の誕生日の前日、夜の月に照らされながら、海で心中をする。
クラゲの触手に包まれて、溺死するスキクー。

が、まよなかは日付が変わり、触手がなくなったことによって生き残ってしまったのだった。
大嫌いな父親譲りの、ライオンの耳と尻尾を生やして。





タップで読むBLノベル
- ナノ -