隠して恋情
気になること
1/1
 昼休みの騒動も忘れて、部活へ行く。去年の部活は神崎君が早すぎただけで、始業式直後は運動部以外あまり見学に来ない。いつも通りの部活。ただ違うのは、神崎君と私の距離感くらいだ。というより、神崎君が近い。いつもホイップクリームを渡すとき、神崎君が話しかけて、私が振り返ってから泡だて器とボウルを渡していたのに、付き合い始めてからは、先輩って声をかけてくるけど、既に近くにいて、いつもなら「貸してください」なのに「やりますよ」なんて言ってきたり。彼氏、なんだけどちょっとくすぐったい。最初の頃は友人にからかわれたのも、時間が経てば何も言わなくなった。それだけでなく、帰るときも送ってくれるようになった。そんなに遅くはないけど、学年が違って会えない分、一緒にいたいんだとかなんとか。恥ずかしいが嬉しい。帰りで神崎君と妹弟が会ったことはない。陸上部の練習が私たちが帰るよりも遅く終わるからだ。今日も私たちのほうが早かったm、と思ったら既に妹弟はリビングにいた。珍しいこともあるものだ。休養日だったのだろうか。


「お姉ちゃん、おかえり」

「ただいま。珍しいね、二人がこの時間にいるの」

「顧問が出張で休みだったんだ。それに気づいたのが放課後だったから驚かそうと思って」

「そうだったの。今すぐ用意するね」

「ゆっくりしてよ、姉さん」

「そうそう。今日は私たちが作るから」


 「え?」と返した私をリビングから追い出すように方向転換をさせて、妹弟は階段まで私を押した。困惑気味な私に妹弟は「いいからいいから」としか言わない。まあ、自主的に妹弟が作ると言っているのだから晩ご飯は任せよう。でも、本当に珍しい。たまにある休養日でも、料理をするなんて言ってこなかったのに。まあ、あの二人に料理をさせれば叔母さんがうるさいからいいんだけど。今日も叔母さんどころか叔父さんも遅いから問題はないし。
ゆっくりしてってことは呼んでくれるんだよね。手も洗ってきたいし、ちょっとくらい、出てもいいよね。洗面所に行くために階段をおると、すぐ近くにリビングに繋がる扉がある。


「お姉ちゃんの好きな人を調査したいの」

「でも愛衣姉さん。学校が違うし、陸上部でしょ」


 どうやら私の好きな人について話しているようだ。これは聞いてるとばれたら面倒どうだ。さっさと手を洗って上に行こう。
 部屋に戻り、さっき愛衣が言っていたことを思い出す。私の好きな人を調べたいか。愛衣はこの春、高校生になった。愛衣と愛樹は小中高一貫校に通っている。高校に上がっても愛樹と一緒に帰ってくるのはそのせいだ。そんな愛衣がどうやって調べるのか。まさか友人を使うのか。使うと言うより、聞き出す、と言った方が正しい気がする、口止めもしてないから、訊かれたら素直に離しそうだ。うわあ。恥ずかしい。何。家庭科室の様子も言われるの? それだけは勘弁して。未だにあれには慣れていないんだ。悶えていると、ふと疑問に感じた。どうしてあの二人は、私の交際について興味があるのだろう。去年の夏祭りでで言っていたことも気になる。私はそれほど男運がなさそうなのか、それとも何か別の目的があるのか。なににしても一度、二人と話さなきゃいけないような気がしてきた。もし、二人が叔母さんに言われてしてるなら、神崎君は大丈夫なことを言わないと。焦燥感が私を襲う。焦ったら失敗しそうだから、焦ってはいけない。今の段階でも言うべきことじゃない。タイミングを見計らないと、私は転校させられる。元々、叔母さんと叔父さんの反対を押し切って今の高校に入学したんだ。戻されるのは嫌だ。なんとしても、今の高校を卒業する。そして行きたい大学に行く。目標を改めて、私は愛樹に呼ばれ、三人で晩ご飯を食べた。


戻る
「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -