翠雨 | ナノ



貴方を愛してよかった


シグルト公子の軍であたしは浮いた存在だった。
だってシグルト公子やシグルト公子のお父様をはめて反逆者として追っている人達の中心人物にあたしのお父様がいるからだ
レックス公子も同じような立場だけど彼はそんなこと計画される前からここにいて信頼を得ている。そして実家が大嫌いだ。
あたしはそんな信頼あるはずもないし。お父様がこんな酷いことしてるなんてほんとは信じたくない。
つまりどちらも持たないあたしは軍の中ではっきり言って嫌われてる。
幼なじみのアゼルや神父様は優しすぎて逆に気をつかっちゃう。
だから昨日のまだ白い雪を集めて独り雪だるまをつくる。何かしらしてないとあたしは孤独に押し潰されそうで……
「ティルテュ?」
急に声をかけられてあたしは涙を拭ってそちらを見る
彼は確かこの国の王子様だ。レヴィンとか言う名前だった。
「俺も一緒につくっていいか?」
「どうぞ」
そっけない返事。なのに彼は気を悪くすることなく雪だるまを作り始めた。次の日も次の日もしまいにはあたしの孤独感は消えて雪だるまをつくる行為は楽しみのひとつになった
■□

「お母様!」
「ティニ―。どうかした?」
私を起こす愛娘の声で私は目が覚めた。懐しい夢をみた。
ちょうどアーサーが遊びにいっている間に兄に連れ戻され小窓しかない部屋に監禁され折檻を受けはじめて数年。アーサーは無事だろうか?アーサーを思っているうちにヒルダが入ってきて日常が始まる
でもその日は少し違った。
「妻が妻なら夫も夫だねぇ。妻と娘が拐われたのに知らんぷりだ。きっと他の女と遊んでるんだよ」
その言葉が耐えていた私の怒りを沸点まで到達させた。
「訂正しなさい!」
怒りに任せて私は魔力をヒルダにぶつける。それに驚き自身も怪我したヒルダは部屋を後にした。きっと兄を呼びに行ったのだろう。
「雪がきれい……」
誰に語るでもなく私は呟く。
きっと今日の折檻は酷いものになるだろう
それでも私は声を大にして言うよ。



貴方を愛してよかった

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