Clap
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コレの設定で雪男vsアマイモン(+メフィ)。燐不在です。





「真巳君は雪ちゃんのお兄さんでもあるのよね?」
「それが?」
「え!?あ、ただ、燐とはよく一緒にいるけど雪ちゃんとは一緒にいるとこはあまり見ないからちょっと気になって……」

この人間の女、杜山しえみとかいったか、が言いたいことはなんとなく解る。しかし実にくだらないことを聞くものだ。くわえていた赤と白の渦巻きロリポップがパキッと音を立てて割れ、いちごミルクの甘い味が口いっぱいに広がった。

「ボクの弟は燐だけです」
「それってどういう……」
「じゃ、ボクは燐を迎えに行かなきゃいけないんで」

燐は今補習の為他の教室にいるが、その補習ももうすぐ終わるはずだ。
何か言いたげな女を無視して欠けたロリポップをくわえたまま長い廊下を歩いていたら向こう側から祓魔師の黒いロングコートを着込んだ男が歩いてきた。
奥村雪男。
相手の存在を認識した瞬間、ガチッと奥歯に力が入りくわえていたロリポップが口の中で粉々に砕けた。

「真巳君、」
「……」

無表情に語りかけてくる奥村雪男を無言で睨み返してからロリポップの棒を気に食わない眼鏡に向かって吐き出す。しかし銃弾より速い速度で飛んでいったソレは紙一重でかわされてしまった。
とても不愉快で、舌打ちも隠さず横を通り過ぎる。こんな嫌な気持ちは早く燐に消し去ってほしかった。

「半分しか血が繋がってないのがそんなに悔しい?」

嘲り笑うような言葉にボクの足が止まる。
錆びついたブリキ人形のようにゆっくり振り向けば勝ち誇ったような奥村雪男の顔があった。
銃も構えず、ただじっとこちらを見下して嗤っている。

「殺す」

短く宣言したのと同時にボクは奥村雪男の喉笛に鋭く黒い爪を伸ばす。
前から気に食わなかったがもう我慢が出来ない。
双子といえども燐に似ていないあの顔ならどんなに酷く潰しても心苦しくない。切り刻んで殴り潰して物言わぬ肉塊にしてべヒモスの餌にしてやろう。
しかしそれが叶うより前にボクの腕を兄上が捉えていた。

「真巳君、先生に暴力はいけませんよ☆」
「っ……!」
「奥村先生もあまり生徒を挑発しないでください。ネイガウス先生の二の舞になってもらっても困ります」
「善処します」

感情のこもらない声で答えた奥村雪男は眼鏡のブリッジを押し上げて廊下の奥へと姿を消す。それを見届けてから兄上はようやくボクの腕から手を放す。

「何故止めたんですか」
「殺すなと命令したはずだが」
「兄上は許せるんですか、あんな」
「あんな傲慢だから私たちの『弟』なんだろう?」
「違う!!」

珍しく声を荒げて兄上に刃向えば背筋がぞくりとするほど冷たい空気が兄上から発せられて口を噤む。
背を向けた兄上の表情は読めない。
しかし自分以上に機嫌が悪いのはその滲み出た殺気からも明らかだった。

「アマイモン。時期が来ればアレも思い知るのだ。人の血がいかに薄いかということを」

そう言って兄上は外した帽子の中から赤と青の渦巻きロリポップを取り出し、振り向きざまにボクの口の中に突っ込んだ。笑ってはいるが目は笑っていない。そんな兄上の顔を見つめながら舐めたロリポップは悪魔の血の味しかしなかった。



悪魔のロリポップ


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