ESCAPE | ナノ

ESCAPE

20







待ち合わせとなっている教室にわたしが着いた時には既に二人共揃っていた。

「あれ、担当の先生は?」

「まだよ、まだ」

サスケにハートを飛ばしていたサクラのあからさまに邪魔しやがってといった表情に苦笑いしつつ窓際の日当たりの良い席に座る。窓からはイルカ先生が授業をしているのが見えた。午前は班分けの発表をして、午後からはもう授業か。ついこの間までは自分があそこにいたのだと思うと、途端に懐かしいと思えてくる。
授業の様子をぼんやりと見ていると、視線に気が付いたのか不意にイルカ先生が此方を見て、驚いた顔をした。手を振ると振り返してくれたが、生徒達はぽかんとしている。くちぱくで上忍師待ち、と言うとやや間があった後、大人しくしてなさいとくちぱくで言ってきた。先生つまりそれは悪戯のゴーサインですか。
口の端に笑みを浮かべながら頷くと、先生は頭を押さえた。とりあえずありきたりだが黒板消し辺りはどうだろうか。

「先生遅いから悪戯しちゃおうか」

ばっと後ろ二人を振り向いて言うと、お前何言ってるのみたいな顔をされた。それにめげずに黒板消しを掴み扉の間に挟む。ちなみに使用する黒板消しは先生が女性だった場合を考えて汚れていない綺麗なものだ。

「ちょ、ちょっとナギサ流石にまずいわよそれは…」

「いや上忍ならそれくらい避けるだろ」

予想通りサクラはわたしを止めようとしたが、意外にもサスケはむしろやってしまえとばかりに黒板消しをもう一つ渡してきた。しかもこれはわたしが空気を読んで遠慮したかなり汚い真っ白なやつだ。えげつない。

「あ、誰か来た」

床が軋む音に素早く窓際の椅子に座る。真っ白な黒板消しはクリーナーの上に置いておいた。多分誰かが綺麗にしてくれるだろう。
軋む音が徐々に近づいてきて、扉の前で止まった。不自然に開いた隙間から白い手が伸びる。そのままがらがらと音を立てドアが開き、額宛をした男が顔を出した。その瞬間、ぽすっという音を立て、ふわふわしてそうな銀髪に黒板消しが落ちた。現れた銀髪マスクに緊張が走る。

「……」

銀髪マスクが床に転がる黒板消しを見て、それからわたし達三人を見た。

「んー、なんて言うか…お前達のこと、嫌いだ」

まあごもっともで。それよりもまさか上忍が本当に引っかかるとは思わなかったのか唖然とした表情で銀髪マスクを見ている。
無表情のまま黒板消しを拾いクリーナーの横に置いた銀髪マスクは、とりあえず外に行こう言い緩慢な動きで教室を出ていった。

「…着いていくか」

サスケの言葉に三人で見合わせて頷く。あんなやる気のなさそうなのが担当か、とか、あんなトラップに引っかかるのが上忍で大丈夫なのか、とか。多分二人ともそんなことを考えていた視線だった。






- 23 -

← | →



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -