ESCAPE | ナノ

ESCAPE

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「…え、…――っと、――ね、――!!」

誰かが呼んでいるような気がして、意識が眠りの底から浮上する。

「――ナギサっ!!」

覚醒する寸前、鋭い声が脳に届く。驚いて顔を上げると、目の前には桃色の長髪を靡かせた同級生が射殺さんばかりに睨んでいた。

「サ、クラちゃん…?」

顔が般若になっている。何これ怖い。
あれから大分経ったのか、席はほぼ全て埋まっている。しかし空席もあるにはあるから、席が無いからわたしに譲れという訳ではなさそうだ。

「アンタ何回呼んだと思ってんの!!それからそこ退きなさい、私はナギサの横、サスケ君の隣に座りたいの!!」

びしっと指差した先を見ると、一人分空けた隣にうちはサスケが座っていた。
机に肘をつき、組んだ手に顎を乗せ俯きがちに真っ直ぐ前を見る姿は確かにかっこいいし容姿も整っているとは思うけれど、それはあくまでも鑑賞対象としてだ。生憎わたしにはサスケのどこに惹かれるのかさっぱり分からない。観察するように見ていたのがバレたのか、サスケと目が合う。同時にサクラが騒ぎ、いいからさっさと早く退けとでもいうような女の子達からの鋭い視線に思わず苦笑を浮かべた。わたしの方が先に座っていたのに。

「――…ごめんごめん、今退くよ」

サスケから自然に目を逸らし、どこに座ろうかと、ちらりと後ろの席を見れば見慣れた黒髪が見えた。わたしと同じように伏せっているあいつはシカマルだ。反対に、にやにや笑ってるキバはわたしの前に座ってたなら起こしてくれてもよかっただろうに。
かたん、と軽い音を立てて席を立つ。ちょうどシカマルの隣が空いてるからそこでいいや。
片目を開けたシカマルに口角を上げ合図を送る。

「…え、サスケくん?!」

サスケの前を通って後ろへ続く階段を上がった時、サクラの驚く声が聞こえ反射的に振り向いた。

「あはは、それでさぁ…」

振り向いた瞬間、どん、と誰かにぶつかって振り向いたまま前へと倒れる。すぐ目の前には立ち上がったばかりのサスケが目を僅かに見開いてわたしを見ていた。
まあ床とこんにちはするのと比べれば、ちょうど良いクッションだろう。そう思いそのまま一直線に吸い込まれるようにして、わたしはサスケへと飛び込んだ。





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