ESCAPE | ナノ

ESCAPE

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「…イルカ先生ってば、大丈夫だった?」

くるりと振り向いて、肩で息をするイルカ先生に駆け寄る。

「あ、ああ…ナギサのおかげで助かった」

ありがとう、と言ってわたしの頭を力の入らない手で撫でた。

「…ミズキ先生は、ちゃんと生きてるよ」

一拍置いて、ちょっと脅かしたら気絶しちゃったけど、とつけ加える。イルカ先生は倒れるミズキ先生の姿に苦笑した後、突然顔を強張らせた。わたしも首だけで振り向くと、見慣れたお面姿が視界に入る。いつの間にか数名の暗部と医療忍者がミズキ先生を取り囲み、隊長であろう暗部が一人、わたしとイルカ先生を見下ろしていた。

「お二方、ミズキ捕獲の協力ありがとうございました」

どこかで聞いたことがある声だ。淡々と告げる暗部の後方、ミズキ先生の治療が終わったのか暗部がミズキ先生を担ぎ上げ風のように消えた。

「医療班、この二人の治療も頼む」

わたしを見てほんの一瞬眉を寄せた医療忍者にわたしも眉を寄せる。

「わたしは大丈夫だからイルカ先生を優先して下さい」

イルカ先生は兎も角、わたしは何をされるか分からないから他人には極力治療はさせたくない。そもそも治療などされなくともわたしは怪我の治りだけは早いから問題はないのだけれど。
そんな事を考えていたら、無言で近付いた医療忍者が治療をしようとした途端イルカ先生は苦笑いを浮かべ手を振った。

「私もそんな大した怪我はしてないので…」

嘘だ。血の臭いだってするし、わたしを庇ったせいで背中に大きな傷があるくせに。

「ミズキも連れて行かれたことですし、この子を送らなければいけないので私たちはここで失礼します」

それを見ていた暗部の人も絶対イルカ先生の嘘に気がついていただろうに、それでは失礼しますと言って医療忍者を連れて瞬身の術でいなくなってしまった。

「…イルカ先生、」

本当に怪我は大丈夫なのだろうか。
イルカ先生を振り向くと、先生は困ったように笑ってぽんとわたしの頭に手を置いた。

「ナギサ、言いたいことは色々あるが…まあ、」

無事で良かった。
そう笑った先生に、今更ながらじんわりと視界が滲みだす。

「それから、ナギサお前ちょっと目を閉じてろ」
真剣な顔にうっかりどきどきとしてしまったけれど、口から出たのは先生今のドラマだったらチューフラグですよという何時ものような台詞だった。先生も呆れたように息を吐きながらさっさと目を閉じてろと言って、若干びくびくしながらも目を瞑る。するとふわりと額に何かが当たった。おいおいおいと頭の中ではパニックになりながら、先生のいいぞの一言にぱっと目を開けると、目の前には微笑んだイルカ先生がいて。

「卒業試験、合格おめでとう」

「なん、で…」

そっと額を触ると、金属の冷たい感触がある。微かな凹凸は木ノ葉の忍という証。

「今の戦いを見て、お前は合格基準を満たしたと判断出来た。…立派な忍になれよ、ナギサ」

怪我があることを感じさせない笑みを浮かべたイルカ先生に、再度試験合格を言い渡される。いいのだろうか、分身も満足に出来ないようなわたしが、合格なんて。
不安げな表情をしていたのか、イルカ先生が心配しすぎだとまた笑った。





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