ESCAPE | ナノ

ESCAPE

09






今から凡そ、十二年前。里は突如として現れた九尾の妖狐により甚大な被害を被った。それは里の若き四代目火影による決死の封印によって幕を閉じたけれど、その新しい人柱力がどういった出自で、何故選ばれたのかは今もあやふやなままで、誰も知ろうとはしていない。

「さあナギサくん、巻物を渡してもらおうか」

「巻物…?っ駄目だナギサ!巻物は死んでも渡すな!!」

一瞬怪訝な表情をしたイルカ先生からして、どうやら巻物の件は本当に伝えられなかったようだ。それでも少しは察したようで、完全に武装したミズキ先生の姿に、追い詰められたような顔のイルカ先生がわたしに叫ぶ。先程会得した術を見せようと距離を取ったせいで、イルカ先生との距離が開いてしまっているから完全にこちらが不利だ。

「渡さないなら殺すまでだ」

どうせ、お前は殺されて当然なのだからと。そう言って笑ったミズキ先生に、イルカ先生が初めて動揺を見せた。

「やっ、やめろ馬鹿!何を言うつもりだ!!」

「知ってるか?うずまきナギサ、お前がどうして里から憎まれているのか!!」

そう言ったミズキ先生が浮かべた表情は、先程までの嘲笑や嘲りでも何でもなく、里人と同じ憎悪だ。もしかしたら、ミズキ先生も大切な人を亡くしたのかもしれない。

「お前の正体はなあ、十二年前里を襲った九尾の化け狐なんだよ!!!!」

満月の光を浴びて炯々と光るその瞳が泣いているようにも見えて。
憐れだと、わたしは思った。






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