ESCAPE | ナノ

ESCAPE

08






近づく気配に影分身を一斉に消す。それと同時に酷い疲労感と倦怠感に襲われ膝をついた。早く布団で眠りたい。閉じていた重い目蓋を開けて、現れた気配の主を見る。最初に来たのはやはりというか、イルカ先生だ。

「ナギサ!!」

「こんばんはイルカ先生、そんな血相変えてどうし――」

「今まで何やってたんだ!!!」

その怒声に、羽を休めていた鳥達が一斉に羽ばたいた。

「お前がいなくなったって大騒ぎだったんだぞ!!」

「え…?」

予想外の台詞にわたしまで驚いた。てっきり巻物盗んだ犯人として捜されていたのだと思っていたのに。まあでもどうせ人柱力が誘拐されたとかそんな所だろう。

「そうだ先生!見て見てわたしすっごい技出来るようになったんだよ!!」

呆れたように脱力するイルカ先生に向かって印を構える。多重はまだ不安だから、普通に影分身にしよう。
深く息を吸い込んで、術名を言おうとしたところで、イルカ先生の遥か後方。枝の上でミズキ先生が歪んだ笑みを浮かべわたし達を見ていることに気がついた。

「ミズキ先生!!」

わたしにだけ向けられた殺気を感じて腹の底にある重たいものがゆっくりと蠢く。視界が赤くなるのを抑えながら、ミズキ先生に向かって微笑んだ。
さあ、久しぶりに暴れさせてあげようじゃないか。






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