ESCAPE | ナノ

ESCAPE

07




「こんばんは、三代目」

堂々と玄関から入ったわたしを出迎えたのは完全にオフモードの三代目火影だった。

「うむ…」

何とも言えない表情の三代目は、恐らくミズキ先生との会話を水晶で盗み見ていたのだろう。仕事とプライベートの時間以外での暇な時は、わたしの護衛と監視を兼ねて水晶でよく盗み見をする人だ。わたしもそれで何度か命を救われているから特に何も言わないが、一応わたしにもプライベートはあるので下忍になるまでと約束はしている。

「大丈夫だよ、本当に盗みはしないから」

そう言って三代目の横を通り過ぎ、目当ての巻物がある部屋へと向かう。

「……ここか」

いくらわたしでも巻物を盗み出す、なんて野暮なことはしない。とりあえずそこら辺にあった半紙に印とかを書き写してから巻物の位置を少しばかり変えるだけだ。
そしてその半紙を手に、全力で火影邸を駆け抜ける。勝手知ったる他人の家とばかりに、ショートカットにショートカットを重ね森へ通ずる窓から飛び降りた。そのまま森の奥深く、血の臭いも、叫び声すらも届かないような奥深くの開けた場所に腰を下ろす。

「それじゃあっと…影分身の術…!!」

チャクラを練り、半紙に書いた印を結べばぼん、という音と共にわたしが十数人現れた。この状態で全員が修行して術を解いても、分身のように本体のみの経験が蓄積されるのではなくなんと影分身全員の経験が本体にも記憶、蓄積されるそうだ。危ない術のところに置いてあったから身構えていたのに、蓋を開けてみたらなんとも便利な術ではないか。

「それじゃあ君は多重影分身、君達は二人組以上で体術、君達は剣術、君と君はわたしと一緒に他の術の修行。何かあったら本体に知らせてね…じゃあ、散!」

そう格好良くキメたものの、忍らしく散らばるわけでもなくだらだらと好き勝手に移動し各々修行を始めた自分に苦笑する。

「それじゃあわたし達も始めようか」

最初に来るのは、一体誰だろう?






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