ESCAPE | ナノ

ESCAPE

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新調した忍服を身に纏い、真新しい額宛を後頭部で結び固定する。姿見に映った背中と両腕の渦巻きマークに笑みを浮かべ、玄関を出た。

「うそ…あの子落ちたんじゃなかったの?」

「火影さまも何を考えているのかしら…あんな子を、下忍にだなんて」

道を歩けば聞こえる陰口。年を経るにつれ直接的な暴力は無くなったけれど、その分こうした陰口が増えたような気がする。まあそんなものは今更特に何とも思わないけれど、耳障りなことは確かだ。
それにしても、もうアカデミーの門が見えているというのに、なかなか卒業生が見えてこない。集合時間より大分早い時間だから当たり前と言えば当たり前だけれど、本当に人気が無い。
これじゃあ、一番最後に受かったわたしが一番乗りかなと思いながら説明会場へと足を踏み入れた。つい一昨日まで授業を受け、昨日は試験の待合室となっていた教室だ。

「おはよー!!」

つい癖で挨拶をする。教室にはわたしだけだった。人のいない朝の教室に、わたしの声が教室から廊下へと響き、反響した。

「本当に一番乗りとは…」

とりあえず無難に真ん中よりちょい後ろ辺りの列の端の席に座る。

「……」

本当に誰も来ない。気配すら無い。時間を間違えたかと時計を確認するも、言われた時間より三十分程早いだけで間違っていなかった。

「はあ…」

もう少し寝ればよかった。
机の上に脱力したように伏せると、直ぐに眠気が戻ってくる。
人が集まれば煩くなるだろうから、それまで寝ていよう。そのまま意識を手放せば、微かに聞こえていた鳥の囀りも遠くなった。






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