ESCAPE | ナノ

ESCAPE

06







忍になりたいわけではないけれど、どうせならなければいけないのなら、火影になりたい。それで今までわたしを虐げてきた奴らを見返してやったら、きっと凄く清々しいのだろう。
そうは言っても分身の術すらまともに出来ないうちは火影どころか忍すら遠い夢なのだけれど。とりあえずまあ、何度目だろうか、アカデミーの卒業試験にまた落ちてしまった。もういい加減アカデミーに通うのも飽きたというのに。そもそもどうして試験内容が変化の術ではなく分身の術ばかりなのか。人には得手不得手があるのだから別のチャンスを与えても良いのではないかと、わたしは声高に問い質したいと思う。まあそんなこと言ってないで修行しろと突っぱねられるのがオチなのだが。

「やあナギサくん」

「こんばんは、ミズキ先生!」

奥様方に大人気のイケメンスマイルを浮かべたミズキ先生に負けじとわたしも笑みを浮かべる。

「試験、残念だったね」

「あはは、どうしても分身の術は苦手で…」

そう言うと、ミズキ先生はくすりと酷く見覚えのある笑みを浮かべわたしの耳に口を近づけた。

「…絶対に試験が受かる術を、教えてあげようか」

「本当?!ありがとうってばミズキ先生!!」

「こんなことしか出来なくてごめんね、ナギサくん。それで、その術が記された巻物は――――」

ああ、思い出した。
この笑みは誰かを誑かそうと企む奴が浮かべる、綺麗で汚い笑みだ。






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