黄昏の風 | ナノ

第五話.四国妖怪来日

数日後の放課後

清十字団の活動が終わり今に至る


「あー疲れた!!せっかく亜茄音ちゃんが
久しぶりに来たんだから早く終わって
くれてもよかったのに…もう風邪治ったんだよね?」

『うん、心配かけてゴメンね』


ちなみに風邪と言うのは休みの口実で

実際の所屋敷で暇をもて余していた


「うぅん、それよりお見舞行けなくて
ゴメンね亜茄音ちゃんの家の場所
わからなかったから」

『気にしないで』

「あ、じゃあ今度遊びに行ってもいい?
せっかく仲良くなれたんだし」

『うん』

「じゃあ僕「貴方は駄目です!」」

『…』

「え、あ、いや皆さんで入らして下さい
アハハハ…」


雪那に視線を向ければ何処か気まずそうに

視線をそらしていた。


「そ、それより今日はずいぶん長く
語ってたよね〜…清継くん」

「だね、日が長い季節でよかったよ
にしても清継君の、妖怪知識にはまいるよ」

「だね本当勉強になるよ」

『どこで調べてるのかしら?』

「さぁ…探ってみます?」

『そこまでしなくていいわ』

「うん!知れば知るほど怖くなってくる
でもそれが妖怪なんだもの!」

「あの子、どうなさったんですか…?」

『さぁ?』

「それが当たり前
逆にそれが魅力…。」


家長さんが独り言を口にしている時

冷たい風が吹き荒れた


『(雪那?)』


視線を、送ってみれば全否定

するように首を左右にふる雪那

となれば、このような冷気を出せるのは

一人だけ…


「リクオ様…本当に…あの晩何が..._?」

『あの晩?』

「な…何にもないよ氷麗」

「いいえ!乙女にはわかるのです!
あの女…家長カナ!アレは完っ全に夜のリクオ様に」

「…。」

「¨ホ¨の字に¨レ¨の字に¨タ¨の字に
ございます!」

「えぇー!なんでそうなるのー!?」

『へぇー、よかったね奴良君』

「ち、違うよ、僕は本当に何も」

「さぁ〜何してたか白状して下さい!
私ご飯作って待ってたんですよ!?」

「え、何の話??」

『さぁ?じゃあ私達はこっちだか…?』


進行方向を変えようと足を進めた時

目の前に見知らぬ制服をきた男性二人が

そこに、佇んでいた。


「リクオ君、それと君は亜茄音さんだよね?」

『誰?』

「「…?!」」

「リクオ君達の知り合い?」

「い…いや」

『私も知らない』


警戒するように雪那は私の前に立つと

それと同時に奴良組の倉田君

あらため青田坊が一歩足を進めた


「おいこら、なんだ、お前ら」

「ちょ…ちょっと青、倉田君やめて
あ…あの…。」


「いや聞く必要はなかったか
こんなに似てるんだから僕と君達は…」

「何を訳のわからないことをっ」


雪那が同じように一歩足を踏み入れる前に

彼女の腕を掴んだ彼等はきっと妖怪だ…


「特に君は若く才能に溢れ血を継いでいる」

「なっ」

「君は最初から全てを掴んでいる僕は
今から全てを掴む僕も、この町でシノギをするから」

『…』

「まぁ、見てて僕の方がたくさん
¨畏れ¨を集めるからさ」

「ま、待って!」

『(雪那追って)』


ゆっくり歩み始めた彼を追うように

伝えればスッと雪那は立ち去り

多分いまも何処かで此方も伺って

いるのだろう…


「両手に花か〜!?やっぱ大物は違うぜよ〜」

¨ペロッ¨

『っ…』

「「「亜茄音ちゃん(様)」」」

「挨拶じゃ、ハハハ…」

「大丈夫!?」

『…』


突然背後に回られたと思いきや

後頭部を引き寄せられ頬を舐められた…

挨拶だと笑いながら去る彼から

目をはなし制服の袖で舐められた

そこを拭き再び視線を向けると

彼等の回りには明らかに妖怪と

思える妖怪たちが道を去って行った






「亜茄音様、先日の彼等はきっと四国の
妖怪の様です隠れ家も分かりましたが
どうなさいます?」

『今は何もしなくていいわ…。』

「亜茄音、浮世絵町一番街まぁ奴良組の
地のことだが聞くか?」

『えぇ』

「複数の妖怪が暴れてる人間にも被害が
多数出てる今の感じだと何れ音嵜の土地にも
被害が及ぶだろうよ」

『…。』


複数の妖怪とは先日の彼等のことだろう

奴良組のならまだしも音嵜の、土地を狙う?


『いい度胸じゃない、フフ』


妖怪の姿になれば髪を結い上げる

そう、わからないなら直接彼に

聞きに行こうじゃないか…


「あ、どこに行かれるんですか?!
まさか…お月見、じゃないですよね?」

『お¨人¨見して来るわね』

「お人見?!って何ですか!?」

『雪那と霧葉は今後私より辺りの
警備をしてちょうだい』

「わかった」

「…わかりました、でも私達はいつでも
呼んで下されば直ぐ駆け付けますから」

『ありがとう』


そう口にして外に出れば

感じたことのない妖気を頼りに

屋敷を後にした。





見慣れぬ高層ビル最近出来たのであろう

そこの最上階に佇む一つの陰に近付く


『この姿で会うのは初めて…よね?』

「君は?」

『昼の私のことは解るのに私は解らないの?』


窓枠に腰を下ろすと静かに

面を外し視線を彼と合わせる


「君が…妖怪の亜茄音さん?驚いたな」


口では驚いたと言っている彼の表情は

余裕その者といった表情で、驚いている

風には到底見えない…


『口のわりには驚いてないみたい』

「そんなことはない、人の君より君は
妖艶で美しい」


そっと頬に触れられた手は冷たく

何処か寂しそうな瞳をしていた


『ねぇ…貴方のこと教えて?』

「僕のこと?」

『そう、貴方の名前は?どうして
四国からきたの?なにが目的なっん…』


一瞬何が起こったのかの

かわからなかったが頬にあった

手が離れた時、口付けされたのだと

その時、初めて気付いた…。


『なに…するの?』

「君には警戒心がないみたいだね?」

『殺されたいのかしら?』

「悪いが今は戦う気分じゃない
そうだ、君の質問に答えてやるよ
僕は四国八十八鬼夜行を束ねる者…
隠神刑部狸、名は玉章」

『玉章…それが貴方の名前』

「訊こう」

『…?』

「我が八十八鬼夜行の末尾に
加わるきはないかい?」

『何が目的?』



「目的なんて何も考えてなんかないさ
僕はただ君が気に入っただけさ
働き次第では幹部にだってしてやる
悪い話じゃないだろう?」

『そうね…』

「では」

『遠慮しとくわ、だって私貴方の事が
嫌いみたいなのよね』

「後悔するよ」

『させてみて?』


彼のことがしりたくて此処まできた…


『無駄足だったかな…』

「なに?」

『何でもないわ、じゃあ頑張って
私やリクオの土地を奪ってみせてね?』


出来るものなら…だけどね。


「そうするよ…手段は選ばないがね」

『…。』


何を仕出かすかは分からないが

長居は無用と思えば、その場を立ち去った



「亜茄音様っ!!」

『雪那?』

「どぉして、こんな所に!!…そんなことより
鳥居さんが四国妖怪に襲われました
あと家の土地の土地神の数人が被害を…」

『なんですって?』


事情を詳しく聞き雨が降り頻る中

袖モギと名乗る妖怪を探した…


「それでは私は此方へ行きます」

『えぇ』


空を見上げれば無数に飛び交う烏達…


『奴良組も動いてる』


烏の行き先と強い妖気を感じながら

後を追えば一つの神社にたどり着いた


¨トッ¨


「何者だ?!」

『あら、殺さないでね』

「亜茄音?黒、そいつは敵じゃねぇよ」


地に足を下ろしたとたん向けられた刀は

リクオの一言でおろされた。


『袖モギ様は貴方達が?』

「あぁ」

『そう、仕返しそびれちゃったな…。
じゃあ鳥居さんは?』

「そうだっ、早く様子を見に行こうぜ」





その後、鳥居さんは奴良組の土地神

千羽様によって救われた事がわかった


『無事でよかったわね、鳥居さん』

「あぁ」

『手段は選ばない…か』

「あ?」


ふと、玉章が口にした言葉を思い出した

そして被害に合った傘下の土地神や

鳥居さんのことも。


『敵討ちしなきゃね、謝ったって
許してあげないんだから』

「敵討ちって、亜茄音達の組も?」

『土地神が数人、ね
守ってあげられなかった…』


自分が玉章の所に行っている間に

起こったことだ、もしあの場に

居なければと考えただけで悔しくなる


『え?』

「手伝ってやるよ俺も俺の土地を
荒らされたんだ黙ってられっか」


髪をクシャッと一撫でされ不思議に思うも

その言葉はしっかり私の心まで届いた


『ありがとね』






「あ、おはようございます」

「おはよう。亜茄音…ちゃん」

『そんなにぎこちなくなるなら
呼び捨てでいいのに…。おはよ』

「うん、そうするよ」


あれから数日後、毎朝何だかんだで

リクオと及川さんと当校するようになっていた

最近、雪那には私から離れ土地神達を

守るようにしてもらっている



『あのさ…気になってたんだけど』

「え、何?」

『奴良組の妖怪、学校内に潜入させすぎ
なんじゃない?』

「いいんだよ、それで皆を守れるなら」

『…本当に良い人だね、リクオは』


玉章とは違う大将の器…彼は彼と違う

誰かを守ろうとする彼に私は

少しずつ引かれている…



【2012/06/17】

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