黄昏の風 | ナノ

第一話.昼と夜の出会い

そう遠くない数日前の話…


「亜茄音、母さんと話が
ようやくついたから明後日から
中学校に通いなさい」

『え?…何をいきなり』

「前々から言ってはいたけど
亜茄音は半分は人間なんだ
から学校へ行くべきだと父さん
は思ってる」

『それで?』

「雪那も付き添いで学校に入る
条件で話は纏まったよ」

『勉強は今まで通り葵さんに
教えともらえば問題はないと
思うのですが』

「人と触れ合うのも勉強だよ
半分は人間なんだから人とも
付き合っておいた方がいい」

「ほら貴方ぁ…亜茄音ちゃん
も学校に行きたがってないわよ
それに奴良組の…アイツの孫の
いる学校になんて行かせたく
ないのに…」

『母様は奴良組が原因なのか』


母親が嫌っている"奴良組"

理由は自分から親友を

奪ったから…だと聞いている

そんな奴良組の三代目候補が

居る場所、興味が沸いてきた。


『明後日から…父様、手続きを
お頼みしてもよろしいですか』

「「え?」」

『何か?』

「亜茄音ちゃん、無理しなくても
いいのよ?」

「母さん…」

『少し興味が沸いただけだから
無理なんかしてないよ母様』

「でもぉ」

「亜茄音が行く気になった
なら私は何も言わない」

『ありがとうございます』


そうと決まれば屋敷内は

普段以上に騒がしくなった。

もうじき夜が来る…。

関東平野のとある街

浮世絵町…この話は、その町に存在する

小さな組の若頭と奴良組若頭の話である…





「いいですか亜茄音様
この学校で生活する間は私が
亜茄音様の」

『姉…ってことでしょ?
ついでに言えば苗字も音嵜ではなく
父様の如月の性を使う』

「わかっているなら大丈夫ですね
あっ、あと奴良組には近づいて
はいけませんからね!くぅ〜私
は、どう化けても亜茄音様と
同じ歳には見えないのが悔しいです」

『はいはい…』


数日経った今、私は学校に

来ている。今までは家で勉強

を教えてもらっていたが私も

それでいいと思っていた。


『はじめまして、如月亜茄音
と言います…よろしく』

「それじゃ如月は奴良の後ろの
席でいいな…奴良、頼んだぞ」

「はい」

『あれが…(奴良組の若頭か)』

「僕は奴良リクオ、これから
よろしくね如月さん」

『あっ…うん』


見た目はただの人間

それ以下で、それ以上でない


『あと、このクラスには』


父様が言っていた如月家と

古い繋がりのある花開院の子も

いると聞いた。母様は花開院

も奴良組と同じくらい嫌って

いたけど、挨拶はしておいた

ほうがいいと父様に言われた


『花開院さん?』

「ん?え…と確か」

『如月亜茄音、何だか
よくわからないけど…(聞こえる?)』

「えっ今?!」

『(私は如月家の末裔なんだ)』

「如月家…話には聞いてたけど
アンタがそうなん?」

『うん』

「私は花開院ゆら私のことは
好きに呼んで」

『それじゃあ私も』

「ゆら君、ちょっと話が
あるんだが…君は見ない顔だね」

『私は今日転校してきたばかり
だから貴方が知らないのも無理ない』

「そうだったのか」

「そや、亜茄音さんも清十字団
に一緒に入ったらどうや?」

『亜茄音でいいよ…清十字団…何それ?』

「清十字団と言うのはだね!
僕の作った妖怪に出会うことを
目的とした言わば部活動のよう
なものだよ」

『はぁ』

「ちなみに会員は僕に島君
ゆら君、家長君、そこにいる
巻君、鳥居君、奴良君と後二人
計九名だから君も大歓迎するよ」

「やっぱ私達も」

「入ってるんだ…」

『私は別に…あぁ』


奴良リクオを知るチャンスか


『入ってもいいよ』

「そうかい、そうかい
それじゃあ今日は如月君の
歓迎会の計画でも立てよう
じゃないか!」

「えっパーティーやんの?」

「ラッキー」

『(何だこの人達)』


それから生徒会室とゆう名の

部室に案内され、いろいろと

面倒な質問をされその日は

終わろうとしていた。





『それじゃ私は帰る』

「あっうん」

「亜茄音ちゃん帰っちゃうの?」

「また明日ね〜」

『うん』


学校を出れば心地好い

夕方の風が吹いていた


「亜茄音様〜!」

『あっ…雪那…忘れてた』

「何処に居たんですか?!
心配したんですよ、それに霧葉
に聞いたんですけど何私の言っ
た事を早速破ってるんですか」

『奴良リクオのこと?』

「そうですよ!何で敵と
仲良くしちゃってるんです」

『母様が勝手に敵対心燃やして
いるだけであって私には関係
ない話でしょ?少し興味が沸いた
だけで馴れ合ったわけじゃない』


実際問題私が奴良組に喧嘩を

売る理由なんて微塵もない

しかし母様の代で下についた

物達は皆、奴良組を嫌っている


「亜茄音ちゃん」

『かなさん…奴良君…えっと』

「及川氷麗です」

『あぁ及川さん、どうしたの』

「噂をすれば…何とやらです」

『(雪那五月蝿い)』

「はいです…」

「得に用はないんだけど帰り道
が一緒なのかなって思って
声をかけてみたたんだ、えっと
こちらの方は…?」

『私の姉で』

「如月雪那と言います」

「亜茄音ちゃんのお姉さん
私は家長かなです」

「僕は奴良リクオ」

「私は」

「及川氷麗さんですよね?
よろしくお願いします」


話を進めながら帰りの路地を

共にしている中、雪那は

ほとんど話すことはなかった


『それじゃ私達はこっちだから行くね』

「あっうん」

「また明日」

『雪那が話さないと静かで
私的に助かったわ』

「奴良リクオ…人間でしたね…
人間を騙す不届きものだと
思っていたのですが」

『そうだね、後あの及川氷麗
って子は雪那と同じ雪女だと
思ったけど気づいた?』

「それくらいわかります!
でも奴良リクオにはくれぐれも
お気をつけ下さい!」

『はいはい』








『ただいま』

「ただいま帰りました」

「亜茄音ちゃん学校は
どうだった?!ぬらりひょんの孫
に何かされなかった?!」

『いい人でしたよ彼は…』

「騙されちゃだめよ!だからっ」

『母様落ち着いて』

「お帰り亜茄音、ところで
小梅ちゃんに会ったかい?
亜茄音を迎えに行くと一人で
外に出て行ったんだけど…」

『私は会っていませんが?』

「もうじき夜だから一人だと
危ないと思ってね」


辺りはほどよく薄暗くなり

それを合図に私も変わる


『私が小梅を捜して来ます
夜の月見がてらに…』

「亜茄音様、私も」

『だぁめ…もし、私の邪魔を
するなら消しちゃうかも、フフ』

「っ」

『冗談よ、冗談…』


部屋に戻り制服から着物へ

外出時は狐のお面をつけて…


「亜茄音様…」

「夜になると母さんに似る?」

「あの子は私の上に行くと思うわ
きっと…」

「「でも夜の亜茄音ちゃん(様)
美しすぎ(です)…」」


外に出れば微かに香る

小梅の匂い…


『どこまで言ったのかしら…』


風に乗り空を舞う

本来の天龍の力の使い方

上空から見慣れた姿を見つける

のに時間はかからなかった。


「お嬢ちゃん名前は?」

「…」

「そう怖がらんでもええ
話たくなったら話せばいい」

「総大将その子はどうなさった
んですか?」

「おう雪女か、道端で迷子に
なっとったから連れてきた」

「この子…妖怪ですよね」

「だと思うんじゃが何も
話さんのだよ…」

「ジジィ、そいつは?」

「リクオ様なんでも迷子の妖怪
みたいですよ」

『(リクオ…)』


リクオ、昼間の彼とは違う容姿

顔も髪型も全てに置いて

昼間の彼とは違う


「無銭飲食だけじゃなく誘拐まで
手を出したかと思ったぜ」

「何、嫌味言ってるんですか」

「おじいちゃん…」

「お?」

「何の総大将なの?
もしかして…奴良組?」

「ん?そうじゃよ、お嬢ちゃんは
どこの組の子かい?」

「私も紗音様のお友達のように
殺すの?」

『小梅』


今は喧嘩する為に来たつもり

ではない。それに此処は奴良組本家


「姉様」

「「?!」」

「いつの間に?!」







「アンタ誰だい?」

『私は…通りすがりの妖
とでも言っておきましょう』

「…」

「うちの者がご迷惑をおかけしてすいません」

『気にしないで…それでは奴良組
の皆様方お邪魔しましたぁ』

「ちょっ待ちやがれ!」


小梅の手を引き堂々と玄関

から出ていく。そんななか

背後から聞こえた声…



「亜茄音姉様が迎えに来て
くれるとは思いませんでした」

『小梅は私の妹みたいな存在
だから…当たり前よ、でも次
無理したら探してあげない』

「はっはい!」

『よしよし…ん?』

「どうかなされました?」



上手く尾行して来ている

つもりなのだろう…

でも、私にそんなのは関係ない

風が教えてくれるから…

でも折角追い掛けて来てくれた

なら歓迎してあげよう



『此処からなら一人でも
帰れるでしょ?』

「姉様は一緒には帰らない
のですか?それともまた
お月見に行かれるのですか?」

『そんなところ…フフ』

「わかりました」

『いい子ね…』


返事を聞けば宙を舞う

もちろん奴良組の若頭が

私を見失なわない低度に

距離を保ちながら…




ついた先は浮世絵神社

一応、音嵜組の手の内である


「っ…」


鳥居の上に腰を降ろせば

見失ったとばかりに辺りを

確認する彼…



『此処よ、若頭さん』

「気づいてたのか」

『手にとるようにね…
私はね此処に座って一人で月を愛でるのが好きなの』

「狐の月見かい?」

『本当に私を化け狐とでも
思ってらっしゃるの?』

「かもな、その面の下の見せて
くれたら何とでも思ってやるよ」

『そんなに見たいなら面を
取ってみればいい…そうねぇ…
十秒だけ動かないであげる』

「それだけあれば充分だよ」

『楽しみ…』


そう口にした彼は妖艶な笑みを

浮かべたまま動かない…


『結局…口だけ?』

「そうでもないぜ?」

『っ?!…のらりくらりと
流石は、ぬらりひょんの孫…』


気付けば何食わぬ顔で

背後を取られていた…

そのままの勢いで難無く

面は彼の手へ


「っ」

『顔を見た感想は?』

「驚いた…」

『それだけ?』

「よく見たらアンタ、いい女だな」

『は?』

「アンタは俺のこと知ってるみたいだけど
俺はアンタのことを何も知らない…だから俺にアンタのことを教えてくれ」

『いきなり何を言い出すかと
思えば…変な妖怪』

「アンタも妖怪だろ?」


『アンタじゃなくて音嵜亜茄音
他は自分で調べてみなさいな』

「帰るのか?」

『私のかってでしょう』


その日を堺にぬらりひょんの孫

との物語は始まったのだと思う

これが昼と夜の出会い…



【2011/12/05】

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