無意味な転生 | ナノ
11〜うっかり伝次郎〜微※

「抱かせてくれるんだろ?まさか、伝からそんな嬉しい言葉を貰えるとは思わなかったな」

 祥治は楽しげに掠れた声でそう言うと、胸を弄っていた右手をオレの身体を伝いながら下へ移動させる。そして、その手は白い短パンの中心…微かに盛り上がっているオレのモノを包み込むように撫でてきた。

「ちょっ!」

「少しだけ反応しているな、伝」

 焦って止めさせようとするが、体勢的にも力関係的にも無理である。唯一できるのは声で止めさせようとするだけだ。

「う、うるさい。お前、その気無いはずだろ?おい」

 こいつは間違っても男を抱く趣味はなかったはず。それは兄弟以上に付き合いがあるオレが良く知っている。
 何回も一緒にお風呂に入ったし、裸も何度も見飽きている。
 冗談で乳首の形を絶賛されたりしたが、その時に祥治が反応したりしなかった。

「うん。男の身体なんぞ、気持ち悪くて触る気にならないな。でも、伝なら大丈夫みたい。おっぱいが無くなっても、ほら、興奮しているだろ?」

「ひぃ!」

 いきなり与えられた感触にオレは小さな悲鳴を上げる。祥治が身体をオレの身体にくっ付けてきたのだ。その時に、服越しでもはっきりとわかるぐらい大きくなった祥治の股間をオレの股間の上に圧し付けられた。
 悲しいかな、経験があるだけにどれほど祥治が興奮しているのか分かってしまう。
 ここまで来ては、出してしまわない事には収まらないだろう。

 だからと言って、長年の親友に抱かれる決意を今すぐ出来るわけもなかった。しかし、そんなオレの困惑などお見通しとばかりに、祥治は次の一手を打ってきた。
 綺麗な顔を少し歪ませ、眉を顰めながらオレに窺ってきた。

「どうしても、俺に抱かれたくないってなら無理強いはしないよ。でも、それなら俺は勇司に倒されるだけだ」

「えっ?な、なんでだ」

 考えもしないことを言われて、オレは条件反射のように理由を聞いた。祥治の思考回路が全く分からない。
 祥治はそんなオレに言い聞かすように淡々と説明をしてきた。

「だって、魔王だから。物語のセオリーだろ?魔王は勇者に倒されるべき存在だ。勇者である勇司は神から召喚された形になっているが、俺は自らここに来た異物にしかない。だから、魔王なんだ。伝のためだけにその立場になった訳だし、伝が俺をいらないって言うなら…」

 いらないと言われて、オレはカッと熱くなり反論する。

「オレが!このっ、オレが祥治をいらないと言うわけがないだろ!バカ野郎!抱くとか言うからおかしくなるんだろうが!」

 いくら親友で無くしたくないと思っていても、それが抱くとか魔王妃とか言う話にどうして繋がるんだとオレは思ってしまう。
 しかし、それはオレの安楽的な考えでしかなかった。
 祥治の闇は底が見えないほど深かったのだ。
 誰よりもそばにいたオレ…伝次郎が目の前でトラックに轢かれて、見るからに即死状態になってしまった肉の塊でしかない身体を血まみれになりながら、抱きしめて獣の咆哮のごとく泣き叫んだ事も…。
 お通夜の最中、誰もいなくなった霊安室で、まるで魂が抜けてしまったかのようにぼろぼろのオレの亡き骸に覆いかぶさっていた事も…。

 もうすでに魂がこちらに飛ばされていたオレは知らない事実だった。だから、祥治の絶望の深さを次の言葉で思い知ることとなる。

「…うん。ごめん、ごめんね。でも、そうでもしないと治まらないんだ。お前が死んだ時の映像が、蘇るんだ」

 うつろな表情で、目だけが吸い込まれそうなほど混沌とした狂気を宿してオレを見下ろしている。上に乗られている祥治の身体からは小刻みに震えていた。

「怖い…。いやだ。…あんな恐ろしい思いをするぐらいなら、この魔力を暴走させて自分自身を消滅させるほうがマシ。思い出しただけで震えが止まらない。自分でもとうの昔に狂っていることは分かっているよ。でも、無理なんだ…」

 壊れたと表現したくなるような儚く美しい笑みを向けられた瞬間、オレの涙腺はあっけなく崩壊した。
 涙を拭こうともせずに、オレはまるで操られているように祥治の頬を掴み、オレに近寄せた。そして、じっと祥治の眼を見つめる。その目は透明感のある宝石のような真紅の色をしているのに、底なし沼のように淀んでおり暗黒の闇のような鈍い輝きをしていた。オレはその目から視線を外さないまま、少しだけ歪んだ形になっている祥治の唇にオレのそれを重ねる。

「こいよ。お前が満足するまで、付き合ってやるよ」

 努めて笑いながらオレは祥治の大きな背中に手を回した。自分の意思を身体でも伝える為である。

 どうせ、オレはサブにもボブにも、そしてつい先日、勇司にも抱かれているんだ。
 親友で、片割れのようだった祥治が自分の性癖を曲げてまでオレを求めているんだ。それが恋愛感情ではなく執着であっても、祥治がこれ以上苦しみ狂ってしまわない為に身体の1つや2つ、差し出せる。不毛な行為であっても…。
 これで少しでも祥治の絶望が和らぐなら甘んじよう。

 祥治を失いたくないばかりに自己犠牲に酔っているオレはこの時は失意していた。
 それは自分の今の姿についてである。
 ディーの身体は自分の意思とは関係なく、二人係で男に抱かれたら反応してしまうように仕込まれていた。
 しかし、今は伝次郎の身体である。さらに、ウサギ耳、ウサギ尻尾と言うオプションまで付いている。
 今さら言葉を訂正できないオレは、あれよあれよと言う間に魔王に好き放題されることとなる。
 未使用であるがゆえに散々慣らされ魔王の魔力まで駆使されて、あまりにもの快感に声が出なくなるまで啼かされ抱き潰される羽目になることを分かっていたら、なんとしても阻止していただろう。少なくとも、一回だけだと制限を付けるぐらいはしていたはずだ。

 しかしそれは結果論でしかなく、実際はオレの言葉通り祥治に身体中、主に胸のあたりを貪り尽くされた。


 魔王が満足するってどれぐらいかしら…。これでエッチシーン終わると暴動がおきそうなので、苦手だけど頑張ります!つたないけど許してね。


  back 
(11/14)

UNION
■BL♂GARDEN■

 
×
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -