4〜ミスディレクション!〜 「タッサク教の教えの元、そんな善良な君を放置はできない。僕自ら、清めてあげないとね」 ナルシストはキラキラ女王オーラをどんどん増しながら近付いてくる。その女でもなかなかいない艶やな口元を真っ赤な舌がゆっくりと舐めている。 そしてその眼は、爛々と輝いており、不本意だがその表情には嫌でも見覚えがあった。最高に嫌な予感がしてくる。 に…逃げねば…。 「おい、ナル。そいつは俺の研究対象だ。手出しは無用だ」 「貴方はただ、淫魔の誘惑に堕ちてしまっているだけっしょ。だから、気が進まないけど聖職者として見過ごせないからね。僕が犠牲になって、恵の聖水を分け与えてあげようと言うのさ」 「聖水など持ち合わせていないだろう」 前髪をさらっと書き分けながら言うナルシスト…ナルに対して、マッドが淡々とした口調で突っ込みを入れる。 「わかってないね。マッド。僕の身体自体が、神からの恵みなんだから、僕から出る物全てが聖水なのさ。だからそれを飲めば淫魔も払えるんだ。素晴らしいだろう?拝みたくなるだろう。ふはははっ。跪くなら今のうちさ」 声高々と笑うナルシスト僧侶がなぜか宝塚の男役に見えてくる。 現実にその笑い方するやついるんだ…。舞台だけだと思っていたぜ。 などと呑気に現実逃避していたが、ナルシストは近付いてとんでもないことを口にしてきた。 「さあ。跪いて僕の聖剣を取り出してその汚れた二つの口に入れるがいい。そして、聖水を浴びるのだ。僕には君のそのチャームが効かないから僕の心配はしなくていい。受け入れて、タッサク様に懺悔をするんだ」 いっやぁ〜。ど、どこの三流エロファンタジーゲームだ。そのセリフ、そのまんま、腐った聖職者じゃねえか。 ドン引きしてしまったオレは、迫りくる変態第2号から少しでも離れるために、座ったまま後ろに手を付き、後ずさる。 「浄化するのは許さんぞ、ナル。まずは俺が研究し尽くしてからだ」 「なら、下の口でマッドが研究して、上の口で僕の聖水を受け取ればいいのでは?力を使わせながらのほうが、祓い易いと思うし」 「…上から下まで全て研究したいのだが?」 「わっがままだなぁ。しかたないか〜。早く済むように僕も手伝ってあげるよ。マッドが満足したら、清めるって形でいいかな?」 「やりたい体位。使いたい小道具。掛けたい魔術。飲ませたい薬が無数にあるから、時間が掛かるぞ」 言わせておけば、凌辱アニメ真っ青の打ち合わせがオレを無視して進められている。 ディー。空気になるんだ。モブなんだから気配を消すのは上手だろう。空気人間になってこの場からそっといなくなるんだ。 オレはモブだ。空気だ。黒子だ。ミスディレクションだ。 それを合言葉にオレは、存在を消してその場から立ち去ることに全神経を注いだ。 そして、それが成功したかと言うと…。 「てめええら!ディーにちょっかい出すんじゃあねえぞ!」 「ちょっかい?勘違いされては困る。これはれっきとした研究だ」 「研究は他を当たって下さい。彼は私たちのモノですから」 「君たちのためにも至上の存在であるこの僕が、彼を清めてあげようといっているんだよ?村人程度が口を挟まないでくれるかな?僕の慈善行為に」 「はん。聞いて笑える。ディーの身体を剥いて、おっ立てている聖職者様からの慈善行為など、おとといきやがれ」 「変態が増殖していますね。なんとか駆除できる方法がないのでしょうかね」 「お前たちもそうだろう。いつも無理やり2人で彼を襲っているんだ。同性同士だし、その枠に充分入ると思うが?」 逃げ切れずに二人に抑え込まれて、剥かれそうになったオレ。しかし、神は見捨てなかった。バリアを破られたことに気が付いたボブサブが探しにきてくれたのだ。…自分たちの親を殴って気絶させて。 そして、勇者軍団(魔法使い、僧侶のみ)と村案内人(戦士、モンク)の闘いの火ぶたが切られた。 もちろん、モブ村人Dは火急速やかに退避する。 end 黒子ファンの方、すみません。引っかかりを覚えても、さらっとトイレにでも流しといてくれたら嬉しいです。タッサク神の申し子ってある意味、ディーだね…。どれが誰の台詞かわかりますか? この章は、モブVS聖職者ならぬ、ナルシスト女王でした。 UNION・■BL♂GARDEN■ |