「うっ。んっ…」
足もとで跪いている華奢な男をオレはひどく冷めた眼で上から見下ろしていた。
全身裸になり、腕を後ろ手で縛ったままの状態で必死に舌を出してオレの股間のモノを舐めている。その顔がひどく滑稽だ。
ブーンとくぐもったような音が聞こえてくる。それはこの男の後腔に突っ込んだバイブが動いている機械音であった。
相手がそんな姿なのに、オレはパイプ椅子に腰かけて、股間のファスナーを少し空けて、ペニスを出しているだけで服装に乱れは全くない。
「ああ…っ。ならっはし様っ」
腰をくねくね動かしながら濡れた大きな眼を上目使いで見上げてくる華奢な男に、オレはますます気持ちが冷めてきた。
男を抱く趣味など持ち合わせていないオレにはその誘惑は気持ち悪いだけのものなのだ。
「もうタイムリミットだ。諦めろ」
ほとんど反応していないオレの一物を彼の口元から離す為に立ち上がる。
「まっ!待って下さい!まだ…っ」
いきなり終了を言い渡されて、縋りついてくる華奢な男を無視してオレは男の脱ぎ棄てられたシャツで濡れたところを拭き取り、前のチャックをきちんと締める。
「やっぱ、男なんぞ気持ち悪いだけだ。とっとと失せやがれ、ビッチ野郎」
オレは冷たく言い放ち、男の縄だけを離すためにしゃがみ込んだ。
「そんな!楢橋様、ひどいです!こんな状態でも…僕、必死に頑張ったのに…!」
「オレははっきりと言ったよな?オレは女にしか興味ねえと。男に触られても勃たねえって。それをてめえが、それでもと言ったんだろうが?オレが頼んだか?」
せっかく縄をほどいてやろうとしたのに、責め立てられてその気も失せそうになる。
「で、でも、手も使わせてもらえない状態でなんて、難しいに決まっています!」
「自信があると言ったのは誰だ?」
「そっ、それは…」
オレの指摘に言葉を詰まらせる。豪語したことを覚えているのだろう。
「約束は約束だろ?お前がそのカッコで勃たせることができるなら、その厭らしく汚ねえ穴に突っ込んでやるとな」
そう。これは何も愛ゆえの行為などではない。大抵1人で過ごしている出来そこないでしかないオレだが、どこがいいのか、夜の誘いをしてくる者は多い。
男しか居ないこの監獄のような学園では当然、男である。その大半は小柄で華奢…つまり、目の前にいるような受けをする者共だった。
今まで、その誘いに乗ったことなどない。すべて無視を通していた。