「あ〜あ。せっかく身代わりで我慢してやったってのにな。やっぱ、俺がバカだったよ。男でもイケるようにしたのが裏目に出るとはな…」
「なっ…何を言ってやがる!」
「美月だったか?…んな野郎に、お前を渡したりしねえよ、お・にい・ちゃん」
伸ばされた手に逃れようと身を捻ったが、元々肉体能力だけは大きくこいつに負けてしまっている俺である。
限りある部屋の空間ではすぐに捕まる。
「離せ!火影」
「聖火。もうとっくに機が熟していたんだよ。俺はお前になり、お前は俺だけのモノになる」
火影の言葉が異国語にしか聞こえない。混乱する俺を放って、火影は俺の身体をじゅっと抱きしめてきた。
「これから、お前の視界に入るのは俺だけだ。この空間で聖火は俺に飼い慣らされる」
そう言うのと、俺の首に冷たい無機質モノが触れるのが同時だった。
「て、てめぇ!」
それが何なのか分かって逃れようとしたが、がっちりと掴まれているためにロクに抵抗できない。そして、無情にもガチリと鍵が閉まる音が部屋に響いた。
それは大きな首輪だった。
「外せねえよ。それにこれもな」
そう言うと、俺の抵抗などものともせずに右腕と右足にまで鎖を付けてきた。そしてそのままベッドに押し倒される。
愚かな俺はここに来て初めて身の危険を感じた。
「なんで、お前が抱いた奴をそのまま抱くことに拘ったか分るか?」
「お前の残した後を食らう為だ」
「一卵性なのに、なぜ俺がバカだったか分かるか?一人でいたか分かるか?分からないだろう。優越感ありありの目を俺に向けていた聖火にはな」
「すべて、聖火を手に入れる為さ。ロクデナシの俺が消えても誰も必死こいて探さねえ。自立したいから家と縁を切ると言っても誰も引き留めやしねぇ」
「それになんで、こんなアホらしいナリでバカな学校で総長なんぞになったか分るか?」
「そうすれば、元に戻すだけで俺は聖火になれる。まさか俺が聖火の姿をしているなど、あのクソ親父もキツネババアも思わねえしな」
「後は、聖火を食らうだけだ。安心しろ。骨の髄まで食いつくしてやる」
まるで壊れたおもちゃのように何度も嫌だと叫ぶ俺を、同じ顔をしている弟が自問自答しながら押し倒し、制服を牙のような歯と手で千切って引き裂く。
「あんまり暴れるようなら、慣らしもせずに突っ込むぞ」
そう言われて、俺の意志とは関係なく俺の身体は大きく揺れる。
「はっ。素直だな、聖火。いや、聖火は俺になるから火影と呼ぼうか?」
「…じょ、冗談じゃあねぇ!」
男同士で近親相姦もくそもないが、それでも、同じ顔をした火影に犯られるなど考えたくもないことだった。
「ああ。冗談じゃねえよ。安心しろ、美月とやらは俺が二度と立ち直れねえぐれぇこっぴどく振ってやるよ」
美月のことを言われて、一気に俺は抵抗を覚える。
そうだ。美月の為にも、俺に応えてくれたあの愛おしい子の為にも、こんな奴に負けない。
「そんなに上手くいくか!絶対速攻でばれるに決まっているだろうが!」
「くっ。ばれてもかまわねぇ。それまでに、お前の身体を堕してやるよ。俺を銜えずにはいられない様にな」
そう言うと、最初っから深すぎるほどのキスを仕掛けてくる。
太い舌を口の中に入れられて唾液をドロドロと垂らされ、俺の舌を吸い取られる。噛み切ってやりたいと歯を閉じようとするが、顎を掴まれているので不可能である。ただ出来ることは息まで奪われそうになるのを、声を漏らしてなんとか呼吸を確保することのみだった。
「んっ…」
それから俺は必死に抵抗するも全てに火影に封じられることとなる。
「はっ…やっぱ、さいこ〜…だぜっ!おにい…ちゃん」
獣のように荒い息を耳に吹き込みながら、トロットロに解された誰も許した事のない俺の内部を蹂躙する男。
「ぐっ…いっ…い゛やだ…」
痛みと屈辱で、無意識に涙が頬を伝う。だが、その涙は野獣になり変わった弟を刺激するのみだった。
「煽ってんじゃあねえ…犯り殺っすぞ!」
そう言いながら、大きく腰を振り激しく律動する。容赦なく打ち付けられて俺はただ、小さな悲鳴を上げることしかできなかった。
こうして、俺は全てを火影に奪われた。
火影は聖火になり、俺は屑の火影になる。
そう。まるでオセロのように…。
end