マリモの憂鬱-マリモ、ドラ○もん希望3
    

 頷いた瞬間、修司は本性を分かりきっているはずの俺ですら見とれてしまうほどの満面の笑みを浮かべてきた。そのあまりにも嬉しそうな表情に今さら拒否できない、弱い俺。

 えーい。口でなくほっぺぐらいなんじゃもんじゃ〜!やってやる !

 10センチ近く背の差があるので、長ったらしい髪を思いっきり引っ張る。

「い、いたっ!」

 いきなりの暴挙に、修司が声をあげる。だが、俺は構わず髪を引っ張って近づいてきた頬へ自分の唇を近づけた。
 触れるかどうかというぐらいの接触で終わらせる。

 ふん!これで文句ないだろう!

 色気もくそもないようなスキンシップだったのだが、次の瞬間。修司が暴走した。
 離れたはずなのに、修司が俺の後頭部を大きな右手で鷲掴みにして無理やり上に向ける。
 さらに左手を腰にまわされて痛いぐらいに抱き寄せられてしまった。

「ちょ…!…んっ!」

 抗議の言葉を口にしようとした途端に、熱いものが口に飛び込んできた。
 思考が真っ白になる。なにがおこっているのか理解することを頭が拒否している。
 だが、その間にくちゅくちゅと濡れたような音と、口中を這いずり回る熱を嫌でも感じてしまう。
 離れようとしてもがっちりと身体ごとホールドされていて身動き一つ取れない。
 キスと言うには深すぎるそれを受け入れさせられる。

 い、息ができない!死ぬ!

 あまりにも長いそれに酸素不足が起こり頭がぼーとしてくる。目じりに熱がたまっていくのが分かった。
 ようやく離れた修司の口もとがやけに艶やかで、俺はなにをされたのか認めざる負えなくなる。
 ファーストキスを奪われたのだ。今まで断固として守り切っていたのに。それも普通のキスをふっとばしてかなりえぐいモノで…。

「かわいすぎ…。あぁ。ほんと、大好き」

 奴はうっとりと、色気たっぷりな声でそう言いながらもう一度抱きしめようとしてくる。

「ざ、ざけんなぁ〜!ぼけぇ!魔王はさっさと魔界に帰りやがれ!!」

 俺は渾身の力をふりしぼって伸びてくる奴の手から脱走した。生徒会資料室から生徒会室に入りそのまま廊下へと続く扉を開け、全速力で廊下を駆け抜ける。
 そんな俺の後ろ姿を鬼の住み処の住民、もとい生徒会役員はあっけに取られた感じで見送っていたのだが、俺は眼にも映らなかった。

「やっぱ、監禁しちゃいたいなぁ〜。私が自分で稼げるようになったら、りゅう好みの部屋をさがそう。もちろん、だれも入れないセキュリティーばっちりな所をね。ああ、楽しみ」

 残された美貌の人が魅惑的な笑顔を浮かべて、そんな不穏なことを呟いていたことも俺は知らない。
 知っていたら、ふたたび青狸の存在を探していただろう。
 未来の自分に逃げろと忠告するために…。

 ○ラえもん〜!

end

(9/12)
  

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