愛してるからこそ






「さみぃー……」


まだ11月半ばというのに
冬の風に体を震わせる
その風は容赦なく
体の体温を奪っていき
秋の寒さはどこへ行ったのか
不思議に思うくらいだ


「たくっ、秋はどこ行ったんだか……」


あー、さみぃ……


「早く来い、バカ臨也……」


マフラーをしても寒い
両手を口に持っていき
息を吹きかけて寒さを凌ぐ
それでも寒くて
早く帰りたい気持ちがあった


これ以上俺を待たせたら
奢ってもらおう……


「はぁー……寒い……っ?!」


イキナリ肩にコートが被せられた
愛着過ぎのファーコートは
アイツのトレードマークだ
しかも、フレグランスの香りが
アイツだと照明しきっている


「ごめん、シズちゃん……遅くなった」


顔を真っ赤にして俺に謝ってきたコイツの
額にデコピンを食らわせた
イッツ!!と呻き、その場に蹲った
暫くすれば、顔を上げ
涙目で痛いよ、シズちゃんを言ってきた


「バァーカ……おせぇんだよ……何時間待たせるきだ」

「本当にゴメン……取引が長引いちゃって……」

「寒いだろ」

「うん、コート貸すよ」

「……寒い」

「なら何か奢ろうか?」


身長が低いくせに、俺の肩に手を置き
引き寄せる
寒かったのが幾分かましになっていき
静雄がさらに密着する様に、体を抱き寄せた
臨也は驚いた顔をして
静雄の顔を見上げるが、肩に乗っけていた手を
腰に移動し引き寄せた


「これなら、寒くないでしょ」

「あぁ、幾分かはましだ」



寒いけど、まだ寒いけど……
たまには喧嘩もせずに
ゆっくりと恋人と過ごすのも
良いのかもしれないな……








「臨也、寒い」

「はいはい、もっとこっちに来て?」

「ん」


寒くても甘く蕩ける日が存在するんだ