不意に引っ張られたような気がして振り返ると、俯いたルルがマントの端を掴んでいるのが見えた。
「ルル?」
 声をかけても、あの大きな飴色の瞳は俺を映さない。どうしたんだろう。
 俺は、いつもあの瞳を向けて名前を呼んでくれるのが好きなのに。このまま目が合わなかったら、すごく悲しい。
「ルル」
 もう一度声をかけると、ルルはぱっと顔を上げた。やっときれいな飴色の中に俺の姿を見つけてほっとしたけど、なんだかちょっと怒っているよう、な?
「……ユリウス」
「うん、なに? ルル」
 名前を呼んでくれたのが嬉しくて、思わず顔が綻んだ。ルルは俺の顔を見て一瞬怯んだみたいだけど、次の瞬間には目に力を込めて見上げてきた。
「……あんまり他の子を見てたら、嫌だからねっ」
「…………え?」
 怒った顔もかわいいな、なんて考えていたら、予想外のことを言われて驚いた。うん、意味がわからない。
「その、ユリウスは女の子に人気があるし、目移りしちゃうんじゃないかなって」
「ええと……」
 なんて言ったらいいかわからなくて首を傾げていたら、ルルはまた俯いてしまった。ぼそぼそと続けられる言葉を、必死に耳を傾けて拾い上げる。
(えっと……)
 これは、あれなのかな。前に、アルバロが言っていた。
「つまり……やきもち?」
 頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出すと、ルルはさっきよりも勢いよく顔を上げた。頬を真っ赤に染めて、今にも泣いてしまいそうな顔で見上げてくる。
「そうなの?」
 もう一度聞くと、ルルは声を詰まらせた。どうやら本当のことらしい。
 じわじわと、頬が熱をもつのが自分でもわかる。
「……ねえ、ルル」
 声とともに、一歩踏み出す。ルルは恥ずかしいのか、頬に手をあてたままこちらを見ない。
さらに一歩。距離を縮めて、腕を伸ばす。
「抱きしめてもいいかな」
 俺は一応、そう聞いてみたけれど。既にこの身体は、返事なんて待たずに目の前にある柔らかい温もりを抱きしめていた。

君しか見えない
(ルル、かわいい……)



ユリウスと言えば大暴走。ルルに関しては、いつまでも堪え性のないユリウスでいてほしいです。

2009.12/31掲載

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