「・・・・・・・ごめん西くん、待った?」















恋人同士がデートの待ち合わせをする時によく使う、ベタな台詞。




実は待ち合わせ時間的には丁度なのだが、これまた意外にも先に着いていたのは西くんだったので、一応言っておいた。




西くんはその声で私に気付いたのか、チラリと横目で私を見てから「・・・・遅ェ」とだけ言い放ってさっさと歩き出す。


私はそんな西くんに置いていかれない様に、少し早歩きで西くんの後に追いついた。












・・・・・今日は、付き合って丁度2年目のデートの日だ。













実は意外な事に、今回のデートを誘ってくれたのは西くんの方だった。



正直言って2年目の事なんかすっかり忘れているだろうと思っていた私は、その予想外な西くんの発言に驚きすぎて、思わず椅子からずり落ちたのだが。(その後ものすごい怒られたけど)








貰ったその日からずっと財布に入れておいたパンフレットをもう一度確認して、
西くんの後ろについて歩く。



私が手に持っているパンフレットには、最近都心に新しく出来た大型ショッピングモールの全体地図や店舗紹介、商品説明などがカラフルな文字や写真と共に長々と書き綴ってある。



多分西くんは、2年目のデートという微妙なタイミングにどこを選択すれば良いのか悩みに悩んで、結局ベターなショッピングデートという結論に落ち着いたのだろう。そう思うと、なんだかむず痒い感覚に襲われる。



それを頭の中から追い払うようにぶるぶると頭を振ると、
丁度電車のアナウンスが鳴って、ショッピングモール前の駅に着いた。













「・・・・・・・わ。思ってたより多いね、人・・・・・」




「・・・・・・・」



















私達はいつもよりなんだか若干混んでいた電車から降りて、
ショッピングモールに着いた。




しかしまあそこでは予想通りというかなんと言うか、この前出来たばかりと言うのもあって、多くの人でごった返していた。





人が多いところが嫌いな西くんは若干顔を歪めていたけれど、
逆に私のテンションはかなり上がってきていた。
















「えっ!?こここの前TVでやってたお店だ!何これすごいよほらほら西くん!!」





「・・・・お前少し落ち着けって・・・・・」




「いやこの状況で落ち着けって言うほうが結構難しい事だよ西くん!あ、あれ可愛い・・・!!」





「・・・・・・」









若干呆れた様な目で私を見つめてくる西くん。





それに対して私は一応「いや、これは楽しんどかないと損だって・・・!」と付け足してまたパンフレットをがさがさと確認する作業に入る。




・・・というか、正直言って店の並びとかよりも西くんと一緒に回れる事に喜んでるんだけどね。




そんな恥ずかしい台詞は心の中に留めておいて、私と西くんは混雑する人の中を歩き始めた。





















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「・・・・いや〜、めっちゃ買ったね西くん!」




「主にお前がな」




「そういう事はいちいち言わなくても良いんだよ!」









・・・・ショッピングモールからの帰り道。




私と西くんは二人でゆっくりと家までの帰路を歩いていた。




私の手には結構な量の紙袋がぶら下がっていて、
その一部の袋は持ちきれず、西くんにも負担してもらっている。




結局、特に何の告白イベントがあったわけでも無いが、(若干失礼な発言だなこれ)
普通に楽しいデートだった。




私がそう思ってちょっとにやけていると、隣から西くんの「キモい」という
罵声が聞こえる。・・・・地味にショック。













「彼女に対してキモいってひどいなぁ西くん・・・」




「いや正直一人でニヤニヤしてる名前の顔普通にキモい」




「だからそれがひどいんだって」












そんな雑談を交わしながら歩いていると、目の前に私の家が見えてきた。



私は西くんから持ってもらっていた紙袋を受け取って、
「じゃ、また明日」と言って帰ろうとする。



・・・・と、その時、私はあることに気付いた。
















「・・・・・・あれ?私こんな袋持ってたっけ?」



「っ!」












私の手にあったのは、なんだか見覚えの無い紙袋。

ありゃもしかしてこれ西くんのじゃないのかな間違えちゃったのかあそっか!と思った私が「西くん、これ――・・・」と言いかけると、急に西くんが慌てたように少しテンパった声を出した。














「は!?い、いや別にそれ俺のじゃねーし!大体俺がそんなピンク色した紙袋のもん買うかよバーカ!」




「え?いやでも多分これ普通に・・・・・」




「いいからマジで俺のじゃねーし!って事でなまえ貰っとけよ!」




「貰っとけっていやあのちょっと西くん・・・・!」













それだけ言って、かなりのスピードで走り去ってしまった西くんの背中を呆然と見つめる。




・・・・・・え、いやあの貰っておけとか言われましても。




多分あの焦った反応から察するに、この紙袋は西くんが買ったものだろう。
なのに、何故かそれを私にあげると言ってきた訳だ。
・・・・正直言って、何がしたいのか全く理解が出来ない。




とりあえずこのまま突っ立っていても仕方が無いので、中身だけでも見ておこうと紙袋の中を覗き込んでみる。




すると、そのピンク色の紙袋の中には一枚のカードと可愛くラッピングされた小さな袋が入っていて。




私はそのカードの文章と袋の中身を確認してから、思わず頬を真っ赤に染めた。





















Congratulations to second year!
(2年目おめでとう!)














(すぐに一緒に入っていた可愛くラッピングされた袋のを確認すると、中身は小さなネックレスで)(私は持っていたカバンの中から携帯電話を出して、西くんの携帯番号を押した。)

















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