それは、彼らが通うそれぞれの学校で、テスト期間に入った週末のこと。
近頃暑くなってきたし学校も衣替えの時期だからと、なまえは一度、自宅へ衣類を取りに戻ることにした。
彼女が西の家に居候することになった事情が事情で、しかもその内情が、今の西にとっては大変腹立たしいものだときている。
そのため、付き添いがいると言うなら一緒にくらい行ってやるつもりだったのだが、「平気、ありがとう」と言われた。
そういう経緯で遠慮なく家にいることにした西は、出かけのなまえに何とはなしにキスをしようとしたのだが。
「だ、だめっ!」
なまえが両手で口を塞いだ。しかも、えらく慌てた様子で。
西の目が据わった。
「何で」
苛々と訊いた西に、彼女は内心冷や汗をかきつつ、やや視線ナナメ45度方向にをずらして答えた。
「そ、の、……テスト終わるまでちゅー断ちしようかと思いまして」
とりあえず西はめいっぱい呆れ顔になった。
「何かそれして意味あんの?」
「や、テスト終わったら丈とたくさんちゅーするんだ!って思ったら頑張れるかと」
「どんな死亡フラグだよ」
「そーゆーこと言っちゃダメ!ともかく、テスト終わるまでちゅーはな、────!」
し、まで言えずに無理矢理持っていかれた。角度を変えて何度も何度も。しまいに舌まで入れられて、なまえの息が上がった頃にようやく離してもらえる。舌先で銀糸を切って、彼は妖艶に笑って見せた。
「人にまで被害出すような死亡フラグ立てるかフツー。生意気にオレにまでストレス与えてンじゃねーよバーカ」