特攻の拓夢百題
21 最後の勝負

これは、ひのきか。
そして、白檀のかおりか。

八尋のまつげがふるえ、整った目元がぴくりと動きはじめた。

しずしずと開いたその目元は、質のいい木の天井をうつした。かわいた目やにがぱらぱらとこぼれてゆく。たったひとつだけ備え付けられた窓。すりガラスのそれから、白と橙の自然光がこの一室を、あわくつつみあげている。

心地よいひのきの香りが、もう一度八尋の鼻梁をくすぐる。
そしておいかけてくるのは、白檀の香。
あの子からときおりかおるのは、このにおいであった。

八尋がついさきほどまで見ていた淡い夢。
そのなかにただよっていた落ち着いた香りは、これであったか。

枕に頭をあずけたまま、かおりのもとを、整った眼でおいかける。
くゆりつづけて、そしておわった香のかけらが、床の間の香皿に落ちていた。

するとぱちりと合うのは、澄み切った瞳。
虚を突かれたまま驚いていると、その瞳は静かに八尋をとらえてやまない。


澄んだ瞳のもちぬしは、毛並みのいい、ちいさな柴犬。
八尋の布団のそばでちいさくまるまり、おとなしいまま、じっと八尋を見守っている。
布団のなかから腕をのばした。
頭を何度か撫でると、少し体をすくめた。


八尋は、あたたかな掛け布団をはぎとり、シーツに片手をついて、慎重に体を起こした。

快適な温度に保たれた風が八尋の身体をつつみこむ。

八尋の身体を包んでいるのは、なぜか着物。昨夜は、特攻服一枚で国道一号を走って、あの海のそばにたどりついた。


それから、大量の血液をうしないながらこの家にたどりつき、
そして。
今、八尋は、板張りの、広く清潔な一室に敷かれた布団の上で、着物一枚で休まされている。


浴衣なら大昔にきたことがあるが、着物をまともに着たことなど一度もない。随分快適であることを初めて知る。素肌にふれるそばから心地いい感触。質のいいものであるということが、ありありとわかる。

額には包帯。

痛みを感じないかわり、寝起きの口の中が、妙に薬品くさい。

癖のように胸元をたしかめた。
そういえば昨晩、プラチナのネックレスはつけていなかった。

枕元には、携帯電話、そしてジッポがそっとおかれている。
閉じている携帯電話をひらいてみるが、画面はブラックアウトしている。

この携帯電話に血相を変えて連絡してくる人間など、こうなってしまった今、何人いるだろうか。八尋は、ととのった口元に、自らをあざけるような笑みを滲ませた。

そして、布団のそばには、特攻服。

ただし、上着は妙に乱されている。

血液が大量に付着したままだ。
脱がせたまま、手はつけなかったのだろう。
そんな汚い特攻服にもぐって、もぞもぞと動くものがいる。

特攻服のすきまから顔をのぞかせたのは、まるまるとふとった三毛猫だ。八尋のことをちらりと一瞥したので、八尋もやさしくほほえみかけてやる。

滅多にみることのできない八尋のほほえみにまみえても顔色などかえない三毛猫は、八尋の特攻服にもぐりこみ、ちんまりとまるまったのは数秒ほど。またも特攻服のなかで大暴れし、服のなかの行き来をくりかえしている。

澄んだ瞳、だけれど何かを問いかけるような、まっすぐな瞳で、おとなしくすわった柴犬は、八尋のことをみつめつづけている。

柴犬の頭をもう一度なでてやる。柴犬は、ちいさな声で一度ほえた。
三毛猫は相変わらず、マイペースにあばれている。

「血のにおいすんだろ、チビ」

三毛猫にそう話しかけると、まるい顔をのぞかせそんな名前で呼ぶなといわんばかりに、にゃあと強気に鳴いた。


昨晩の乱闘で最もダメージをうけた頭の傷は、ずいぶん手慣れたようすで手当されている。眠っているときに頭をあずけても、痛みひとつ感じなかった。厳重にほどこされた包帯は、素人の手によるものとは思えない。

この、広く、清潔な一室。

この、徳の高そうな家。

ここは、あすかの祖母の家。
あすかの暮らす家だ。


千冬はどうしたであろう。あんな夜のあとにあいつがたどりつく場所は、あの店と、あの子のもとだろう。
あの千冬が見つけた、すこやかな心をもつ恋人のもと。
今だけはあの家で、あの子に守られて休んでいてくれと願うばかりだ。

勝負は、またすぐ始まるのだから。


警察と、この夜崩壊したAJSの反八尋派の追尾をふりきり、横須賀から葉山をまわり、気づけば、森戸海岸すぐそばのこの家に単車はとまっていた。

厳重なセキュリティで守られている扉を一心に叩き、
激しい傷を負ったまま、真夜中、あすかの目の前で気を失った。

着替えさせてくれたのは、あすかだろうか。
ということは、今着物の胸元からのぞくこの傷跡も、あの子に見られた。

そもそも、あすかはこれを知っていたのかもしれない。


そのとき、静かにとざされていたふすまがひらいた。

膝をつき、両手でそっと開かれたふすま。
心地いい冷気も流れ込む。

ふすまにかけられた手のもちぬし。
澄んだ瞳が、上体を起こした八尋をおごそかに見つめた。

「あすか」

あすかのすがたをとらえたとき、ふすまのうえにそなえつけられている時計が眼に飛び込んできた。朝の8時。

品のいい洋服。
つややかな黒髪の少女が、弱々しい声で八尋のなまえをよんだ。

「渉先輩……」

ひざをついたあすかが、板張りの静かな部屋へ入り、ふすまのそばにそっと正座した。

「あの……」

いますぐ八尋にかけより八尋の世話をしたい思いをこらえたあすかが、ばつのわるい色を純粋な眼にかすかに浮かべて、ふすまのこちらとあちらを、おろおろと見比べている。

あすかのそばを、客人の服など乱していない猫をよそおった三毛猫が、そそくさととおりぬけてゆく。

そして、開けられたふすまの向こうからあらわれた人物。

それは。




その時間は、およそ40分ほどであっただろうか。

上品なニットにスカート姿のあすかが、ひざをついたまま、もう一度ふすまを引いた。

盆の上には、朝食一式。
そして、痛み止めの薬、水のそそがれたグラス。

「渉先輩……」
「ああ、あすか。昼くるまでには、ここ出るからよ。何から何まで、わるかった」
「……もう、痛くありませんか……?」

柴犬は、あいかわらず八尋のそばによりそっている。
もっとも、まるまったまま眠り込んでしまったが。

八尋のそばに盆を運んだあすかが、上品に正座をする。
フレアスカートが、板の間にひろがった。

「お医者さま、およびしました」
「ああ、そう言ってたな……んな時間に呼んだのか……?」
「おばあちゃんがよんだら、とんできます……」


ふすまの向こうから堂々たる様であらわれたのは、あすかの祖母であった。
日本舞踊界に脈々と流れる太い血筋の大元である女性。
あすかがそっとふすまを閉めたあと、この部屋は、あすかの祖母と八尋のふたりきりとなった。
八尋にはとうてい価値のわからぬ着物に身をつつみ、八尋のそばに腰を下ろした女性。
何千年もの樹齢である柱のように、背筋ののびた女性。つられて八尋のせなかものびる。

その凄みは、数千もの人間のうえに築きあげた今の八尋自身。八尋がつかんだてっぺんを、いとも簡単にひねりつぶしてしまそうなものであった。

昨晩のことを訥々と語って聞かされた。


あなたのすがたをみて、どれほどあすかが傷つき、泣いたか。
あなたの面倒をみることに、我々がどれほど手間暇を割いたか。
あなたのことを、わたしは甘やかさない。
この夜起きたこと相応の責任をあなたには求める。
今後二度とその恰好でここに出入りするな。

あすかが今もあなたを頼り続ける意味を、
ここにあすかに会いに来る意味を、今一度考えろ。


「恥を知りなさい」

そんな、究極の言葉すらとばされたのだ。


手厳しくも筋のとおった言葉の数々を思い出しながら、そばにちんまりとすわったあすかのことをいつくしむようにみつめた八尋が、手短に述べた。

「メシ、わりーな」
「いいえ……あ、あの、お帰りになるときの、服なんですけど」
「ああ…コイツ、クリーニングすっから……」
「え、えっと、家政婦さん、今、先輩のご実家に……」

あやうくあすかをすごんでしまうところだった。

そして、あすかの祖母にもいいつけられたことだった。


あなたの実家に一切の言い訳はしない。
ここにいることを連絡する。
診療代はもつが、それは貸しておくと。


あの浅川というチビによって打ち砕かれた、あの夜あの場にいたものすべての価値観、倫理、考え方。八尋もそれを一から組み立て直さねばならない。

「オマエの婆さん、こっぇえな?」
「……おばあちゃんに意見できるの……あの世界でも、ふたりくらいですから……」
人間国宝の方でも、頭あがらない方がいらっしゃるので……。

八尋の言葉に茶目っ気が滲んでいたので、あすかはほっと安堵する。
納得してくれたのだろう。
それでも気がかりなことはある。どうか、一息をつく場所として選んでくれたこの家で、何の気兼ねもなく休んでいってほしいけれど。

「でも、先輩にご無理なこと……」
「ああ、大丈夫だよ。ありがとうな」
「いえ……あの、何かあったら、私もちゃんと…」

あすかの声を楽しみながら、八尋が室内をぐるりと見渡した。

「わたしの部屋までは、お連れできなくて……」
「このいえ、女手しかねえだろ?」
ったく、めーわくかけっぱなしだな?

あすかが、ふるふると首を振った。
八尋がくずれおちた玄関から、一階の奥のこの部屋まで。
それは、さほど大変な労働ではなかったのだ。

「オレ運ぶのも大変だったろ」
「え、えっと、それは、家政婦さんが、その……」
片腕でかるがる……こーやって……。バイクのお世話もできるんです……。

昨晩はちょうど、家政婦が泊まりこんでくれている日であった。
あすかが、八尋の強靱な体をあっさりと右肩にかつぎあげた家政婦のことを、まねてみせる。きゃあきゃあと喚きながらも、優秀な仕事を遂行する家政婦の女性は、八尋のことをあっさりと持ち上げていた。そして、なんでもできるあの女性は、八尋のバイクの面倒もひととおり看てあるのだ。
あの豪快な女性ならそれもあるかもしれない。
そして、八尋が、いたずらっぽくあすかにたずねた。

「着替えもか?」
「……」

あすかがことさらちいさくなった。
それはあすかが担当したということであろう。
着物をどうととのえていいやらわからない。
寝乱れた着物のまま、八尋があすかにたずねる。

「ここは……」

この家は、あすかの部屋と、リビングしかしらない。

「お稽古場です」
「血だらけにしちまったか」
「拭きました……清浄なところ、なんですけど、渉先輩は特別です……」

神棚。美しい板の間。
老人の遺影。小さな本棚のなかに分厚い書物。そして、モニターとラジカセ。

「あの、さめます……」

いまだどこか悄然としている八尋のそばにそっと寄り添うあすかが、盆の上のちいさな鍋のなかで湯気をたてるそれを寄せた。柴犬がぴくりとめざめて、もう一度目をとじる。

さほど弱ってもいない。
からだの傷から、すでに回復しつつある。
でも、どこか、うつろだ。

あすかは、八尋のことを賢明に見守る。

「あすかがつくったのか」
「はい。家政婦さんがつくるっていったけど……」
おいしくなかったら、ごめんなさい……。

ちんまりとうつむいてしまったこの子に、冗談のようなことは伝えられない。おまえがくわせてくれるのか、などと。
れんげで、とろとろとした液体をすくいあげる。
品の良い味わいのおかゆを、八尋は遠慮なく口に運んだ。


「おいしいですか……?」
「ああ」
「ありがとうございます……」

ぱくぱくとおかゆを口にはこぶ八尋が、胸元をゆびさす。

「みちまったよな、こいつ」
「……問題は、そこじゃないですよね……?」

あすかのやさしげにさがった瞳に、八尋のことを真摯に想う炎がやどる。

「……八尋先輩がケガされてるの、私、始めてみたとおもいます……」

傷ついたあすかを守ってくれたことはあっても、
八尋が傷ついている姿を見たことは、一度もなかった。

「……こんなに、つかれてらっしゃるのも……」

お互いが中学生のころ。
八尋が卒業してから。
あすかに会ってくれるときの八尋はいつも、自信に満ちて、きれいなすがただった。

「……こんなに、傷ついていらっしゃるのも、です……」

その裏に、どれほどのキズをおって、どれほどくるしみ、どれほどのできごとが起こったか。
あすかと初めてあったときからずっと、八尋は強く、うつくしく、堂々としていた。
でもきっと、八尋だって初めからこうではなかったはずだ。

「先輩、何か……」

あすかがただただ頼り続けてきた八尋。
彼に守られ続けてきたこと。
どれほどの血と涙と汗を流してきたのだろう。
自分は一度でも、いつも強かった八尋のそんなところへ思いを馳せただろうか。
八尋にそんなことがあるわけがない。そう思ってはいなかっただろうか。

「悲しいこと……?」

あっさりと食事をたいらげた八尋が、すごみにみちた瞳をまるくした。
その瞳の、すごみ。
あすかは残念ながら、すごみ、畏怖、威厳のうえでは、あすかの祖母の方が勝ちだと思っているけれど。

あすかの言葉。
そのあまりにシンプルな真実に、八尋がしずかにわらった。
あすかが痛み止めと水をてわたす。

「……」

錠剤をほうりこみ、水で流し込んだ八尋が、この部屋に置かれている写真をゆびさした。

「あれは?」
「祖母が踊りをおそわった方です。祖父じゃないです。亡くなった祖父は、能の人なので…」
「へーえ」

グラスをあすかに返した八尋がたずねる。

「おまえも踊るんだよな?」
「…踊ります……まだまだですけど……」
「みてえな」
「渉先輩!!」

あすかが、ちいさな声で叫んだ。
ねむっていた柴犬が目をあけて、あすかをじっと見つめる。
そのちいさな犬と似た瞳で、八尋が、急に声のトーンがかわったあすかを見守る。

「観にきてください……それだけじゃなくて……」

ひざをつつむフレアスカートをぎゅっと握りしめたあすかの手のひらに、気づけばぽたぽたと涙が落ち始めた。

「冬には、浅草……」

澄んだ季節のなかで、八尋と一緒にいたい。
こんなに傷ついたこの人じゃなくて、いつだって強かったこの人と。

「春に……半蔵門の劇場で、やります……」

ほがらかな風が吹く町のなかで。
八尋をこうして傷つけた人たちから逃れて。

「夏も、秋も……ずっと……」

一体、八尋の背負うものとは何なのだろうか。
あすかを襲ったもの、あすかが今も苦しみ続けるものとは、何なのだろうか。
考えても考えても、こたえが見えない。

「わたしと……いっしょに……」

すすりあげも、しゃくりあげもせず、ぽたぽたとこぼれてゆく涙。
たちあがった柴犬が、あすかのそばにまわって、ぺたりとすわりこみしっぽで床を叩く。

「ずっと……いっしょに……」

捨ててしまえばいいのに。
全部なかったことにして、かなぐりすててしまえばいいのに。

八尋の腕がのびる。袖がすべりおち、精悍な腕にも包帯が巻かれている。
かたちの整った親指が、あすかの頬をそっとぬぐった。

八尋の、薬品くさいくちびるが、あすかの頬を流れる涙を啜った。

「ごめんなさい……」

かすかに痛み止めはきれはじめている。
今飲んだ薬は、もう一度ききはじめるだろう。
その腕で、あすかを引き寄せる。

「ごめんなさい……」

これまで、まだ抱き寄せられるだけであったあすか。
あすかの細い腕が、八尋の精悍な背中にぎゅっとまわった。

「おまえからはじめてこうされたな」
「ごめんなさい…さっきの、わすれて……」

だいそれたことを言ってしまった後悔があすかを襲った。
八尋の生きる世界。
八尋のめざすもの。
そんなこと、あすかもわかっているはずだ。
わかっていて、そんな世界に巻き込まれて傷つけられて、それでも都合よく八尋を頼っている。だれよりも理屈がとおらなくて、だれよりも弱くて、だれよりもみっともないのは、自分自身だ。
そんな罪の意識が、あすかを責め立てる。

そして、彼女を責め立てるもの。
彼女を泣かせるもの。
そんなものをすべて、いまだにすてられぬ八尋が、すがりついてくるあすかのことを、いとおしく抱きしめ続ける。

「三日だ。最後の勝負があるんだよ」
「……」
「三日だけ、待ってろ」
「三日……」

あすかは、八尋のことをただ、待ち続けながら生きてきた。
これからもこうするつもりだろうか。

「オマエんとこに、帰ってくるよ」

帰ってくる場所になりたかったのだろうか。
何が正しいのだろうか。
自分はどうして泣いていたのか。
自分は八尋にどうなってほしいのか。


「帰って……こなくても……いいから……」

傷ついた八尋の肩口。
あすかの祖母の師匠が使っていた着物。
尊い血を流す人に受け継がれる着物だ。
そこに、あすかがぎゅっと顔を埋めて、八尋に必死ですがりつく。

「大事なもの、ちゃんと、もう一度みつけられて……」

答えがほしかった。
明確なものがほしかった。
この出口の光がほしかった。
それでも。

「渉先輩が、本当に自分で納得されたことに、したがって、ください……」

まだこの背中を手放すことはできない。
きっと、あとすこしだけ、八尋はこの世界にいるのだろう。
そしてもう一度、あすかと初めて出会ったときから求めるものを、見つけにいくのだろう。

「あすか」
「……」

あすかが、顔をあげる。
悄然としていた八尋の瞳に、生の輝きがやどりはじめる。

「いこうな」
「はい」

八尋がこの世界から羽ばたくまで。
あすかも、もうすこし自分らしくなっていたい。
八尋には、選べる人も、選べる道も、いくつもある。
あすかも、自分の道をみつけたい。
そして、それまで。時々、この広い背中、あたたかな体温。
直に感じなくてもかまわない。
だけれど、ほんのすこし、このあたたかなかおりを確かめられることができれば。

「またくるよ」
「すぐじゃなくていいです……」

八尋のくちびるが、あすかのしっとりとしたくちびるに近づく。
身体をすくめたあすかのもとに、いつの間にか三毛猫がくっついていた。
八尋の意識は三毛猫の方に向かう。

三毛猫は、ふすまの隙間からこっそりとしのびこんでいたのだ。
八尋のたべた器の匂いをかいだあと、何かを抗議するように、八尋に向かって鳴き始める。柴犬が、三毛猫を叱り飛ばすように吠えた。

「帰ってくるんじゃなくて……」

傷つき、そして立ち上がろうとしている八尋を、あすかが見上げた。
そのやさしい瞳に、凛とした魂がみちあふれる。

「会いにきて、ください……」

左右に別れた前髪からのぞく、あすかの賢そうな額に、八尋がそっとくちづけを落とした。
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