Doll


サンジくんが苛立っている。


理由は数日前にサニー号を襲撃してきた船の人に組み敷かれ服の中に手を入れられ、からだをまさぐられてしまったから。


私の叫び声を聞き当然真っ先に助けに来てくれたサンジくんはその現場を目の当たりにした。


だから。


「ヒロインちゃん、」

「はぁ…あっ…ン、なぁに、サンジくん…」

「好き、だよ」


決して私に怒ってるんじゃない。


私に触った男への怒りが消えずに。


もしかしたらサンジくんは、私に触れた男には、私の知らないところで手を下しているのかも知れない。


けれど触れられた事実は消えないから。


多分その消えない事実がサンジくんの心を支配しに来た晩は、やり場のない怒りを抱くことで私にぶつけてる。



「ンっ…!ぁ、はぁ…サンジくん、私も、すきぃ…」

「…ん、好き」

「はぁ…!あ…!ア、…っ、あぁぁ!」


両膝を曲げて付き後ろから激しく突かれ。


迫り来る快感に上体を支えることもできずに両肘も付き小さく丸まる。


そんな私の背中をサンジくんは覆うように包んで、大きな手では胸を揉んでいる。


それから激しい腰の動きに加え、胸の頂きをきゅっと摘ままれて。


押し寄せる更なる快感に耐えきれずにあっという間にイッてしまった。



「ッ…!…はぁ…イッちまったな…、ヒロインちゃんの中クソきつい」

「は…ぁ…!ア、…ンジくん、だ、めぇ…、おかしくなっちゃうぅ」

「ハ…、すげぇかわいいよヒロインちゃん、愛してる、」


耳許で何度も何度も好きだ愛してると優しく囁かれながら。


イッても尚容赦なく突かれて、いつまで経っても終わりの見えることのない快楽に喘ぐ。





Chocolate


フォンデュ用の鍋の底に残ったチョコレート。



「ヒロインちゃん、チョコレートフォンデュ、うまかったかい?」

「うん、とってもおいしかった、ありがとうサンジくん」


片付ける為にシンクまで運べば、当然のように手伝う為にヒロインちゃんも後を付いてきてくれて。


いつもみてぇにかわいい顔で嬉しそうにおれを見つめてる。



「んー…でもヒロインちゃん、まだあるよ?」

「うん?」

「ほら、」


鍋の中のチョコレートを人指し指と中指で掬いヒロインちゃんに見せる。


そして唇の前まで持っていけば。


意図を察したらしいヒロインちゃんは、ぽっと頬を紅く染め、一瞬にしてチョコより甘い顔付きになった。


それから遠慮がちに舌を出し、おれの指にぺろりと這わせた。


指先に全神経が集中する。


ヒロインちゃんは両手をおれの手に添えつつ、 瞳ではしっかりとおれを捕らえ。


指先を舐めていた舌は第一間接まで這い、おれの指を徐々に深く加え込もうとする。


あー…たまんねぇな。


そんな姿に口角を吊り上げ笑えば、ヒロインちゃんは眉尻を下げて更に瞳を潤ませた。



「…フ、そんなにうめぇ?おれの指」

「んっ……ふぅっ」


ヒロインちゃんが言葉を口にしようとした隙に、もっと中まで指を滑り込ませる。


「ンン…」


指先で舌の上をそっとなぞれば、少しだけびくっとからだを反応させた。




Superiority


おれのプリンセスは。


おれのことがクソ好きで、素直で。


従順で柔順。


その上で何処か無邪気で奔放で。


おれを翻弄する。


唯一、おれから本気で余裕を奪う女。



いつも目の届く範囲に置いておかねぇと不安で仕方ねぇっつーのに。


おれのその気持ちが分かってて、昨日も出掛けた街でわざと独りになった。


おれを独りにした。


そしておれの気持ちを試す。



…そんなことができんのも全部おれの愛に甘えてる証拠っつーのは分かるけどな。


ヒロインちゃんが、おれに対してそうなるように仕向けたのはおれ自身だし。


思惑通り。


なのに弄ばれちまうんだから、おれもまだまだ青いと思う。



結局最後に優位に立つのはおれではあるが。


それでもやっぱりおれのプリンセスはいつだって思うままに気儘だ。



「――フ…、昨日なんか…あれじゃ姫っつーより女王様みてぇだろ」

「…ハ、なんつー独り言だよ」


停泊中、今日の船番はおれ。


だから今からヒロインちゃんと二人きりで甘いティータイムをする為に、準備をしていた。


冷蔵庫で冷やしているレアチーズケーキはもう少しで固まる。


そうしたらベリーを使ってヒロインちゃんの喜ぶようなデコレーションをする予定だった。


いつものごとく、おれはヒロインちゃんのことばかり考えてる。


そして思わず独り言を言っちまうと、そんなタイミングでゾロが入ってきて。


乾いた笑い声と共ににやりと笑った。
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