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一方的に追いかけてた。


何が特別かって聞かれてもうまく説明できねェんだけど。


目が離せねェって気付いたときにはもう取り返しのつかねェ程好きになってた。


日に日に、まじで怖ェくれェ好きで。


何かにつけて、君はおれの特別なんだよ、ってアピールしてた。


多分、つーか確実にヒロインちゃん(と、ルフィとチョッパー)以外のクルーはおれの気持ちに気付いてる。


でも肝心のヒロインちゃんからは、おれが何したって優しい笑みが返ってくるだけで。


他の野郎にも向けられてるのと変わらねェ優しい笑顔。


最初はそれでも良かった。


笑顔見れりゃ嬉しいに決まってる。


だけど好きが増す毎に、おれもヒロインちゃんの特別になりてェ気持ちが膨らんで。


しまいにゃ笑顔見ただけで不純な気持ちまで芽生えるようになっちまって。


だがさすがにそんな気持ちのまま接していくのは良くねェだろうと思ったから。


ヒロインちゃんが風呂上がりに水を飲みに来て二人きりになれたキッチンで、男サンジ一世一代の告白をした。


うまく行けばクッソ幸せ。


うまく行かなかったら………クソやだけど、諦める。


そう決めて気持ちを伝えた。


「ヒロインちゃん、おれさ…君のことが好きなんだ」

「え…?…うん?どしたの、サンジくん、急に、」

「あー…やっぱ今までのは伝わってなかったみてェだな…、念の為言っとくけどこの好きは特別だよ、ナミさんやロビンちゃんに感じてるものとは全然違ェの」

「うそ…、…えっと…ほんとに?サンジくんが…?サンジくんなのに…?」

「クク、おれなのにって、ひでェ」

「…ふふ、だって…」

「ヒロインちゃん、おれの言ってること嘘じゃねェよ、ヒロインちゃんだけ特別に好き」

「ほんとにほんとう??…冗談、とかじゃなくて…?」


まぁおれの性格はあんなだし。


ヒロインちゃんがなかなか信用できねェのも無理ねェのかも知れねェが…。


「ヒロインちゃん、おれの目、見れる?」

「ん…」


諦めるにはまだ早ェから。


目を見させて、真っ直ぐに見つめ返し、もう一度告げた。


「おれはヒロインちゃんが好き、まじで好きすぎて…今気持ち伝えとかねェとおかしくなっちまいそうだったんだ」


するとヒロインちゃんにもおれの本気が伝わったみてェで。


頬を真っ赤に染めて、眉を下げて、振り絞ったような声で「…サンジくん、ありがとう」と言った。


かわいすぎて、やべー。


だがありがとうっつーのは、告白の返事としては微妙なところだった。


受け入れてもらえた訳ではねェ。


ただ玉砕な訳でもねェだろうから。


今すぐにでも押し倒しちまいてェ気持ちを堪えて、一縷の望みを託す。


「…ヒロインちゃんは、おれのこと、好きかい?」

「それは…もちろん、好きに決まってるよ、…でも…」

「特別かって聞かれるとわかんねェ?」

「………、」


ヒロインちゃんは申し訳なさそうに遠慮がちに首を縦に振った。


…薄々そんな気はしてたが……、やっぱりか。


だがはっきり拒絶されたわけでもねェこの返事で、そんな簡単に引き下がれるわけもねェから、畳み掛ける。


「じゃあさヒロインちゃん、まずおれのことを、君のことを好きな男として意識して欲しい」

「意識…?」

「それでおれ、ヒロインちゃんにおれのことを特別に好きだって思ってもらえるように頑張るから…」


そうして抑えきれねェ気持ちも相乗して、ヒロインちゃんをそっと抱き締めていた。


ヒロインちゃんにとっては、きっと逃げ場のねェ環境。


「形だけでもいいよ……試しにおれと付き合ってくれねェかな…」


耳許で囁いて。


ずるいかも知れねェ。


でもそうまでしてでも、ヒロインちゃんの心を揺さぶりたかった。


だって今夜を逃したら、ヒロインちゃんを捕まえることなんてもうできなくなっちまうだろうから―――。


「…ッ…、サンジくん…!」

「ヒロインちゃん…ごめんな、急にこんなことして……、だがおれ本当に…君のことが好きすぎて…」

「サンジくん……」


抱き締めたら、初めは強ばっていたヒロインちゃんのからだ。


だが今は少し力が抜けたことが分かった。


「…ねぇ、サンジくん…」

「ん…?」

「離して…?」


そして優しい声で、諭されたみてェで。


呆れられちまったような気がして。


…終わった、と思う。


これ以上粘った所で変化もねェだろうし、最悪嫌われたかも知れねェ。


もう悪足掻きもできねェや。


心がみるみる沈んでいくのを感じながら、ヒロインちゃんを腕の中から解放した。


情けねェけど、顔を見たら泣いちまいそうな気さえして、顔を上げられなかった。


「あぁ…ごめんな、ヒロインちゃん……もうしねェから………あと告白も…」

「…待ってサンジくん、今自己完結したでしょ?」

「え…?」

「私もちゃんと返事したいから、私の目も見て?サンジくん」


こう言いながら、おれの手の甲にヒロインちゃんの手のひらが重ねられた。


予想外の台詞と出来事に咄嗟に顔を上げると、澄んだ瞳のヒロインちゃんと目が合った。


その表情は柔らかくて、今の行動に対しても怒ってねェと言われてるみてェで、無性に安堵した。


「サンジくんが私のことを本当に想ってくれてることが伝わってきた」

「ああ…ヒロインちゃん、おれは君のことが本当に好きなんだよ」

「ん…こんなに切羽詰まってるサンジくん初めて見たし……だからね、私もサンジくんをもっともっと知りたいと思ったよ」

「…じゃあ…ヒロインちゃん…それって……」

「えっと……あの…、お試し期間からで良ければ…よろしくお願いします」

「………、!!」


ヒロインちゃんの言葉が夢みてェで、理解するのに数秒かかった。


そして受け入れてもらえたと気付いたと同時に、嬉しさからもう一度ヒロインちゃんを抱き締めていた。


思わずさっきよりも力が入っちまったと思う。


「ヒロインちゃん…!クッソ嬉しい!おれ君のことまじで大切にするし、頑張るから、」

「ありがとうサンジくん…、でも私、誰かを特別に好きになるとかまだよく分からなくて…、こういうことにも慣れてなくって…」

「じゃあ…ヒロインちゃん、今まで好きな男とかもいたことねェの?」


腕の中のヒロインちゃんは控え目に頷いた。


つーことは…ヒロインちゃんの初恋の男になれるのかも知れねェ。


それどころか初めての何もかもを奪える可能性もある。


純粋さにも惹かれていたが、ここまで無垢だとは思いもよらねェで。


ヒロインちゃんへの愛しさは募っていくばかり。


「ヒロインちゃん、ゆっくりでいいよ」

「ゆっくり…?」

「ヒロインちゃんのペースでおれのことを見てくれりゃあいいから、…その間にもしおれが嫌なことしちまったらはっきり嫌だって言っていいし」

「うん…サンジくん、わかった」


言いながら、ヒロインちゃんは額をおれの胸板に軽く預けた。


喜びから必要以上にうるせェ心臓の音が聞こえちまいそうで照れくせェけど、ヒロインちゃんのこともまだ手放したくなかった。


お試し期間だとしても、クソ好きな女を手に入れることができた幸せに浸る。


「…ちなみにさ、ヒロインちゃん、」

「うん?」

「今の状況みてェのは…嫌じゃねェ?」

「あ……うん…、すごく緊張はしてるんだけどね、でもなんかサンジくんいい匂いだし、あったかくて…いやじゃない」

「そっか…そう言ってもらえてクソ嬉しいよ」

「ん…、でもサンジくん、いつまでこのまま?」

「……本音言うと、このままここで一緒に眠りてェんだけど…」

「え!ここで!?このまま!?」

「フ、だよな、いきなりそれは厳しいよな」

「はい…」


まだまだ抱き締めていたかったが、ヒロインちゃんのペースに合わせる約束をしたし、ヒロインちゃんに回していた腕を解いて。


手を取り、甲に口付けをし、頬を紅く染めるヒロインちゃんにおやすみと告げ、それぞれ寝室に向かった。


夢見心地で眠りに就いた。


だってまじで夢みてェ。


だが翌朝もおれの顔を見て照れくさそうにするヒロインちゃんは、しっかりと昨夜の延長にいて。


現実なんだと実感する。


そうしてスタートしたヒロインちゃんとおれの清い交際。


おれは今まで以上にヒロインちゃんのことを特別なプリンセス扱いしたし、ヒロインちゃんもおれとの時間を意識してくれるようになった。


中でも夜、おれの仕事が終わった後のキッチンで、眠るまで他愛もねェ会話をして過ごす時間が楽しみだった。


二人きりの時間は増え、距離も縮まり、知れば知るほど好きになった。


正直今まで何人もの女と関係を持った。


だがこんなにも純粋に女と接するのは初めての経験で、それもまた新鮮だった。


幸せだった。



三週間程経った晩のこと、甘めの酒なんか呑みながら、いつも通り談笑をしていると、ふと沈黙が産まれた。


自然と視線が絡まって、ヒロインちゃんの綺麗な瞳におれが映る。


すげェいい雰囲気な気がして、手を重ね顔を近付けた。


手が触れた瞬間は僅かに肩を震わせたヒロインちゃんだが、雰囲気は察してくれてると思えたから。


そのまま一度だけ唇を重ねて、初めてのキスをした。


触れただけだがヒロインちゃんの唇の感触が、おれの唇にしっかりと残った。


だがいきなりがっつくわけにもいかねェし、本当はもっと何度もしてェけど、我慢して唇を離す。


そのまま至近距離で覗き込めば、恥じらいつつも思わずおれから目が離せなくなっちまってるヒロインちゃんに満たされて。


「……ヒロインちゃん、好きだよ」

「サンジくん…」

「まじでかわいい、…キスも、嫌じゃなかった…?」

「……やじゃなかったよ」


いつもより少しきつめに抱き締めながら、髪を撫でた。


そんな行為を抵抗することなく受け入れるヒロインちゃん。


ヒロインちゃんのことは何かと抱き締めたくなっちまうから、抱き締める回数も長さも日に日に延ばしていった。


ヒロインちゃんも徐々に慣れてきた様子で、今は全く警戒心なくおれの腕に収まるようになった。


「じゃあ…また、してもいい?」

「…ん……、…ぁ、でも、今はもうやめてね?さっきのだけで心臓破裂しそうだから…」

「クク、了解、ヒロインちゃんの心臓が破裂しちまったら元も子もねェもんな」

「ふふ、うん、」


だからキスも、時間を掛けて回数も深さも増していければいい、そう思った。


実際初めてのキスをした晩から、毎夜キスができるようになった。


クソ大切に育んで、緩やかに進展していく恋のレッスン。


拒まれることもねェし、キスをした後のヒロインちゃんはいつも安心しきっておれにからだを委ねるから。


次のステップに進む目処も見えた。


そうしてまた数週間経った日の晩。


いつも通りのキスをし、それからヒロインちゃんの唇を舌でそっとなぞってみた。


するとヒロインちゃんは驚いたように僅かに「ぇ…?」と声を溢した。


「…ヒロインちゃん、怖ェ?」


いつでも唇は触れ合わすことのできる距離で聞くと、戸惑いつつも小さく首を横に振ったヒロインちゃん。


ここでも拒まれなかったことに触発され、もう一度唇を重ね、口内に舌を侵入させた。


「…んっ…」

「ハ…ヒロインちゃん、クソかわいい」


優しく舌を絡めると、ヒロインちゃんの唇からは甘ェ吐息が漏れた。


その上、たどたどしいながらも深いキスにも応じるヒロインちゃんが愛しくてたまらなくて。


「ふ……ぁ、はぁ…」

「あー…やべ…」

「…っ……ンジく…」


気持ちも相俟っているせいか、すげェ気持ちよかった。


こんなキス覚えさせられちまったら、まじでおれもうヒロインちゃん以外無理だ。


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