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くすん、くすんと泣き続ける。


騙されたのよとか、私がばかだったのとか、そんな自分を傷つける言葉ばかりをヒロインちゃんはおれの隣で口にする。


こんなに近くにいるならいつもみたいに“おれのヒロインちゃん”とか腰をぐるぐると回しながら言いたいけれど、(あわよくば前から抱きしめたいけれど)今日はそんな雰囲気ではなかった。


好きだったのよと、ヒロインちゃんは続ける。


訳わかんねえ島のなんとかいうヤローに惚れちまったのはヒロインちゃんだ。


そうしてその後抱かれることを望んで、いいようにされて去られたのもヒロインちゃんだった 。


「そんなヤツ、もう、忘れちまいな」


「うん、うん…。でもね、本当に私ったらバカみたい…」


そう続けながら震えるヒロインちゃんが消えちまいそうで、おれはヒロインちゃんの腰に手を回して、ぐっと力を込めて引き寄せた。


「あ…ッ」


突然のそれにバランスを崩して、ヒロインちゃんはおれに雪崩れ込んだ。


あ、と思う。


近い位置にヒロインちゃんの顔があった。


慰めるためにその形よい唇に、おれのをそうっと重ねることが出来たらいいのに。


――って、そんな特権持ち合わせてねえけど 。


おれの唇のすぐ先で、ヒロインちゃんの唇が小さく動いた。


「ねえサンジくん。もうちょっと待って。」


「――?」


「こんなに思ってくれるサンジくんを好きになる日が来たらいいって、そう思ってるから 。だからもうちょっと待って」


「―――…」


その言葉にヒロインちゃんとの心の距離を感じちまったもんだから、胸の奥が苦しくなった。


体はこんなに近くにいるというのに。


だけど待つ、いくらでも待つ。


ヒロインちゃんの傷が癒えるまで、ヒロインちゃんがおれのことを心の底から求めてくれる日まで 。


「頼っちゃってごめん。サンジくんの私への気持ちを知ってるから甘えたの、私」


その言葉に「いいさ」と言いながら、さきほどバランスを崩した時にスカートの裾からあらわになったヒロインちゃんの太ももが気になっ た。


白く細いきれいな足。


こんな時にでもグラっときちまう、男って厄介な生き物だから、おれは耐えられそうになくてヒロインちゃんの足に毛布をかぶせた。


その突然の行為にヒロインちゃんは小さく驚きの反応をみせた。


「え?」


「あ、その。風邪ひいちまうといけねえだろ ?」


「あ、ありがと…」


その言葉に落ち着いて顔を緩めて笑ったヒロインちゃんに、ちょっとした申し訳なさを感じる 。


本当は自分の欲を抑えるためだなんて、口が裂けても言えねえな。



ただ、ヒロインちゃんにはもっと自分の体っても んを大事にしてほしいもんだ。



いつか振り向いてもらえたときに“ヒロインちゃんはおれのもの”って、おれに愛され刻み付けられるその日まで。





▼ラブチップのナオ様にいただきました。



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