( 惚れ薬 )



「…なに怪しげな本読んでんだよい」

「あ!マルコ隊長!!」


やけに真剣な顔で本を読んでるから、そっとしておいてやろうと思った。


が、堂々と“黒魔術”と書いてある表紙が目に入り突っ込まずにはいられなくなった。



「だからその怪しげな本はなんなんだよい」

「フフフー、なんと惚れ薬の作り方が載っているのです!!」


ヒロインは誇らしげな顔でそのページをおれに見せ付けた。


惚れ薬って…。


「おまえは本物の阿呆かよい」

「ふふ、私だってこんなの信じてるわけじゃないけどさ、もし本当に効くんだったらすごいじゃん」


「…飲ませてぇやつでもいるのかい?」


おれとヒロインは付き合っている。


それなのに恋人であるヒロインがそんなことを言っていたらいい気はしねぇ。


惚れさせてぇ相手がいなきゃ惚れ薬なんて必要ねぇだろう。



「え?マルコ隊長だよ?」

「はあ!?なんでおれ…」


これでも今までの女とは比べ物になんねぇくらい大切にしてるつもりでいた。


それなのにおれの愛は伝わってなかったというのかよい。


「あーヒロインさん…今のおれの愛じゃ不満かよい」

「不満!?不満なんてないよ〜」

「じゃあいらねぇだろ!そんなもん!!」


余計な心配させやがって…。


ヒロインから黒魔術の本を取り上げ放り投げた。


「あ、マルコ隊長、もしかして心配したの?」

「…しちゃわりーかよい」

「ふふふ、嬉しい」


本当に嬉しそうに笑ってやがる。


おれがどれだけおまえを想ってるか、ちったぁ自覚しろよい。


ヒロインは放り投げられた本を拾い、おれの隣に座り直した。


「なんでおれに飲ませてぇんだ、惚れ薬」

「だっていつまでもこの幸せが続くとは限らないでしょ?」

「…それはヒロインが心変わりするってことかよい」


「私!?私はしないよ〜、私じゃなくてマルコ隊長!!」

「はぁ?おれだってしねぇよい」

「そんなの分からないでしょ!だからずっと好きでいてもらう為に飲ませたいの」


…そんなことの為におれに惚れ薬を飲ませてぇって言ったのか。


一生愛し続けてもらう為に。



「…でもそれだとヒロインがもし心変わりしたとき困るじゃねぇかよい」

「だから、しないって分かるから飲ませたいんだよ」


「フ、飲ませる方も覚悟が必要ってわけか」

「本気で一生一緒にいたいと思える相手じゃなきゃ飲ませられないよね」



そんな理由だったら、ヒロインになら惚れ薬を飲まされても構わねぇと思ってしまう。


おれも相当重症だねい。





恋患い。




心配しなくても一生傍にいてやるよい。


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