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キッチンのカウンターに座って明日の朝食の仕込みをするサンジくんを眺める。


とっても幸せな時間。


だってサンジくんってやっぱりかっこいい。


キレイなサラサラの髪に、目鼻立ちの整った小さい顔。


背も高くてスタイルも良くて…誉め出したらキリがないんだけど。


キリがないからこそ見てるだけで厭きなくて。


心の底から好きが溢れ出して。



それに今、目の前で動いてる手。


すっと指が長くてキレイで、だけど大きくてしっかりと男の人の手で。


そしていつも器用に繊細に動いてる。



「ヒロインちゃん、」

「んー?」

「おれの手、そんな見てて楽しい?」

「ん、幸せだよ、…あーでもサンジくん気が散る?」

「いや、そんなことねーよ、だがいつもヒロインちゃん何考えてんのかなって思ってた」

「あ、うん、抱かれたいって」

「…へ?」


あー…しまった。


告白の順番を間違えてしまった。


でもね、その手見てたら、本当にね。



「へ…?え…?ヒロインちゃん…今、なんて?」

「ふ、くすくす、ごめんね、びっくりさせちゃったね」


今まで目線は手元に向け手際よく野菜を刻みながら、会話をしていたサンジくんの動きがぴたっと止まった。


そして真ん丸い目をさせて顔を上げて。


少し頬を紅く染めたサンジくんと、目が合う。


なにその反応、かわいいんだけど。



もういいや、勢いに委せてもう一回言ってみよう。


「あのね、サンジくんに抱かれたいなって、思ってたの」

「いやいやヒロインちゃん…レディがそんなこと軽々しく言っちゃいけねーよ?」


あーそう来るかー。


サンジくんってすぐ食いついてきそうとかも思ったけど。


やっぱ肝心なとこは紳士なんだね。



「えー私のこと抱いてくださいませんか、プリンスー」

「フ、プリンセスはそんなこと言ってはいけませんよ」

「あ、このプリンス、ケチです」

「クックッ、ケチじゃねーよ、ヒロインちゃんのことを想って言ってんの」


言いながらサンジくんの長い腕が頭上に伸びてきて。


わしゃわしゃと髪を撫でられて、宥められる膨れる私。



「…じゃあもういいもん、お風呂行ってこよーっと」

「クク、了解、…あ、だがヒロインちゃん!今のやつ他の野郎に言うんじゃねーよ!?」

「あー…ふふ、言うわけないじゃん、サンジくんのことが本気で好きだから言ってるのに」

「…え…?ええ!?」


よしよし、順番間違えたけどちゃんと告白もできた。


サンジくん超びっくりしてるけどね。


皮を剥いてたらしいにんじんがゴトンって落ちたよね。


そういうとここそうまく交わせばいいのに、なんか本当にかわいいね、サンジくんって。


「あ、でもいーの、サンジくんは全てのレディのプリンスだから、悲しい返事は聞きたくないし、」

「…だが、ヒロインちゃん、」

「うん、いーのいーの気にしないで、じゃあ行ってくるねー」



これは、本音。


だから一生気持ちなんて伝えない方がいいかなと思うこともあった。


でもあまりにもサンジくんが素敵過ぎてぽろっと抱かれたいなんて言っちゃったから。


軽い気持ちで言ったんじゃないことは分かってほしかったから。



んー…でも、やっぱり。


さっきまで眺めていたサンジくんが脳内で蘇る。


かっこいいよねー、あの手はずるいよねー…。


絶対エッチうまいよね。


それに優しいし?ね、うん。



シャワーを浴びれば落ち着くかなと思ったけれど。


一度でいいから触れられてみたいという願いは、想えば想うほど増した。



じゃあもうここはあと一回だけ!


もう一度勢いに委せて、今度は無邪気に色仕掛けでもしてみようかな。


…あそこまで言っちゃったらなんとなく報われたいじゃん?


例え気持ちが報われなかったとしても、一晩だけでいいから応えが欲しいの。



ということで!


只今お風呂上がり、もう一度サンジくんのいるキッチンへ向かいます。


「サンジくーん」

「あ、ヒロインちゃん…!」

「お仕事終わった?」

「ん、ああ、たった今な」


サンジくん、いつもの王子様スマイル。


そんな笑顔と同じように笑って、カウンターの中、隣まで行く。


間近で見てもキレイな顔が微笑んでるだけ。


もう動揺はしてないのかな。



…それはそれでちょっとだけ寂しい気もするんだ。


動揺してくれていたら、少しは私がサンジくんの心を揺すぶれた証拠なのに。


だからまた、動揺してほしくて。



「サンジくんも今からシャワー?お背中流しましょうか?」

「フ、…あーだが、ヒロインちゃんは?眠れねぇんだったらお付き合いしましょうか?プリンセス」

「ん?抱いてくれるの?」

「クク、いや、ちげえ、話したりできんだろ」

「お話ね、サンジくんとお話できるのはとっても楽しいよ、でもねー…、やっぱサンジくんに」


抱かれたいなぁ、と言いながら更に詰め寄って。


パジャマの一番上のボタンを外す。


…あ、崩れた、笑顔。


ちょっと満足。


でも足りるわけもなくて。


「ふふ、サンジくん、触ってくれる?それとも私のからだ魅力…ない?」

「いやいやいや!それはねーよ!断じてねぇ!」

「だったら、サンジくん…」


本当に困らせたいわけじゃない。


だから本気で嫌がられるようならすぐにやめるよ。


ごめんなさい、する。


関係を壊したいわけじゃないから。



でも、サンジくん。


嫌がってるようにも見えないんだよね。



「触って、くれる…?」

「ッ…!ヒロインちゃん、だが…!」


上目遣いで見つめて、更に一つ二つボタンを外す。


あらわになるブラと谷間。


サンジくんは赤くなり一瞬凝視して、慌てて目を逸らした。


「…見てくれないの…?」

「ヒロインちゃん…!!自分のからだ…大事にしねぇと、」

「どうして?私はサンジくんのこと好きなんだから、大事にしてるつもりだよ」

「でも、ヒロインちゃん…、っ、おれも君は特に大事なんだ…!」

「サンジくん…?」


ボタンを外したことが手伝って、するりとパジャマが擦れ片方だけ肩もあらわになった。


そんな私をサンジくんは紅く染まった頬のまま、今度は眉を下げて遠慮がちに見つめた。


特に大事って言ってくれた、嬉しい。


だけどどういう意味なんだろう…?


そうは言っても困ってるのかな…。



そしてサンジくんはパジャマの下がってしまった部分を掴み、肩を隠してくれて。


その瞬間少しだけ腕に触れたサンジくんの手の感触が愛しかった。


熱い。


…でもふざけるのもこの辺が引き際なのかも知れない。


だって困ってるんだもんね、サンジくん。



「あ…、迷惑だった…ね、サンジくんごめ」

「ちげぇ!そうじゃねーんだ…!」

「…うん?」

「あのな、ヒロインちゃん…、おれにとってレディは…大切にするもので汚す対象じゃねーんだよ」


…え?


それって…??



「…汚しちゃ、いけねぇんだよ、」

「ってことは…、もしかして、サンジくん……」


ここまで言ってサンジくんの頬は更に更に赤くなった。





まさかのチェリー。




物ッッ凄い意外だったけど、その反応もかわいくてきゅんだし。


一瞬にしてサンジくんならそれもアリだって思えちゃって。



「それください」なんて八百屋さんで買い物でもするかのようなセリフを皮切りに。


我慢なんかできるわけなく、なし崩しにとっても貴重なものをいただいた。




これをきっかけに始まった私とサンジくんの関係。


こんな始まりは、誰にも言えないから。



お話にもならないの。



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