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あー…やばい、お腹痛いかも。


ううん、かもじゃない。


これ、確実に超痛い。


どうしよう、どうしよう…。


不安だよー。


痛すぎて吐き気までしてきたし。


うー…、こんな夜中にかなり申し訳ないけど、チョッパーに薬もらおう…。


ていうか、男部屋の皆さん、起こしちゃったらごめんなさい。



―――コンコン


「あれ?ヒロインちゃん?どうしたの?」


思い切って男部屋の扉を叩けば中からサンジくんが出てきてくれた。


ああ、サンジくんだ…。


ほっとする。


でもお腹痛くて、もう立ってんのも辛い、泣きそう。


「サンジくん…おなかいたい……」


左手ではお腹をさすりながら、右手は無意識にサンジくんのシャツを掴んでいた。


「え!?ヒロインちゃん大丈夫!?じゃなさそうだな…おい!チョッパー起きろ!!」


サンジくんが呼んだことでチョッパーは目を擦りながらゆっくりと起き上がった。


やっぱ眠いよね、ごめんねチョッパー。



「なんだー?サンジ…」

「ヒロインちゃんが具合わりぃって!早く診てやってくれ!!」

「本当か!?じゃあ早く医務室へ!!」


ああ、そっか…医務室まで行かなきゃだめなんだった。


ここまで来るのもかなりつらかったんだけど。


もう少し歩かなきゃ…。



「じゃあ、サンジくん…起こしちゃってごめ…!!?」


サンジくんにお礼を言ってチョッパーの後をついて医務室まで行こうとしたとき、急にからだが浮いた。



うわーうわーうわー…!


サンジくんがお姫さま抱っこしてくれてるよー!!


お腹痛くてそれどころじゃないんだけど、すごい幸せ…!


サンジくんあったかい。



サンジくんはそのまま医務室まで運んでベッドに優しく寝かせてくれた。


横になれたことでお腹の激痛も少しだけ落ち着いた気がする。


サンジくんの腕の中も名残惜しいけれど…。



チョッパーは私の診察を始めてくれている。


でも、この腹痛の原因はだいたい分かってるの。


もう…、そんなことで起こしちゃって二人ともほんとごめんなさい。



「チョッパー…、私食べ過ぎでしょ?」

「え?おう、なんか胃に負担がかかったみてぇだな」


ああ〜…やっぱり…!


サンジくんのお料理がおいしいからって調子乗って食べ過ぎちゃった私の馬鹿!


「はぁ…ごめんね、そんな理由で起こしちゃって…」

「そんなこと気にすんな!!これ薬だから、飲んで今日はこのまま休めよ!」

「ありがとう、チョッパー…優しさが身に染みる」


ほんとに痛すぎて超不安だったから、チョッパーの言葉で心があったかくなった。


サンジくんは未だ不安そうな顔をして、枕元に座り私の顔を覗き込んでいるけれど。


「サンジくんも、ごめんね、チョッパーに診てもらったからもう大丈夫だよ、本当にありがとう」

「いや、でもまだ痛そうだし…ヒロインちゃんが眠れるまでいてもいいかい?」


はぁ…やっぱりなんて優しいんだろう、サンジくんは。


じゃあお腹痛いことに乗じて甘えてしまおうかな…。


しかもサンジくんが「おれが診てるからチョッパーも休めよ」とか言って、思いがけず二人きりになった。


お腹痛いのやだけど、サンジくんがお姫さま抱っこしたりこうして心配してくれてるから、お腹痛くなってよかったって思えてきちゃうよ。


まじで、やなんだけどね、痛いのは。


でも幸せなんです。



「…ヒロインちゃん、まだ痛ぇ?眠れそうにねぇ?」

「ごめんねサンジくん…ほんとに気にしないで、サンジくんも休んで?」

「ヒロインちゃん…おれのことなんてどっちでもいいから」


優しいよー、サンジくん優しいよー。


でもお腹痛いよー。


こんなにお腹痛いんだから、もうちょっと甘えたって罰も当たらないだろうっていう気すらしてきた。


甘えちゃおう…。



「……じゃあサンジくん、手、握ってもらってもいい?」

「!!ああ、もちろんだよ!」


サンジくんは大きな手を私の手に重ねてくれた。


超落ち着く。


魔法の手、だなぁ…。


あったかくって安心できて、お腹も痛いけどそのまま睡魔に襲われた。


サンジくんに手を握ってもらったまま眠れるなんて最高に幸せだ。



翌朝、目が覚めると夜中の腹痛は嘘のように治まっていた。


「チョッパーの薬効いてよかった…」


思わず一人言を言うと、私の言った一人言に反応し右手に重ねられている大きな手がぴくりと動いた。


ていうか、サンジくん…!ずっと付いててくれたんだ…!!


「あ、ヒロインちゃんおはよう、良くなったかい?」

「うん!!…でもサンジくん大変だったでしょう!?ほんとごめんね!」


「だから、おれのことはいいんだって」

「サンジくん…、ありがとう」


「いいえ、クク、でももうあんま食い過ぎんなよ?」

「はい、もう、それは…重々承知しております…」


ううぅ、今更なんだけどすっごい恥ずかしい!


あんなに痛くて死にそうだった原因が食べ過ぎだなんて…!


しかもそんな理由にサンジくんを一晩中付き合わせてしまったなんて!!!



「…でもヒロインちゃん、お腹はいつでも痛くなっていいからね?」

「え…?どういうこと?」

「フ、そしたらまた手、握って寝てあげる」

「!?」



サンジくん!それって仮病でもいいってことですか!?


じゃあきっと今夜も!





おなかいたい!




二人の関係を進展させてくれたのは、食べ過ぎが原因の腹痛だなんて。


お話にもならない。



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