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※現パラ



あの金髪のぐるぐる眉毛のコックめ。


無駄にかっこよくてさ。


声だって、喋るだけで、罪で。


その上最高に優しくて。


本当に理想の王子様。



でも誰にでも優しくて。


女の子大好きで。


その癖「君が一番好きだよ、愛してる」とか、本気の目をして言っちゃって。


だけど普通に信じるじゃん。


仮にも彼女だったし。


なのに。


なのに、なのに、なのに。




「サンジくんのバカー!」

「おーもっと言え言え」

「女好き!エロ!エロ!エロ!バカ!」

「ハハハ、すげぇ言われよう」


ぽろぽろぽろと瞳からは涙が溢れだして。


なんなんだろう。この気持ち。


信じてたサンジくんに裏切られて。


悔しいのかな。悲しいのかな。


それでもまだ好きなのかな。


ああ多分きっと全部だ。


けれど、もう、戻りたいなんて思わないから。




「うぅ…あの金髪、ちょっといい男だからって調子乗りやがって…」

「まァ、確かにいい男だもんな」


言いながら目の前の黒髪癖ッ毛そばかす男は優しい笑みで私の頭を撫でた。


サンジくんもよく撫でてくれたこの髪。


一緒にいる時は、ドライヤーも必ずしてくれてた、この髪。



「…やめてよ“いい男”、」

「ああ?誰が?」

「エース、…ぐすん、エースだっていい男じゃん」

「クク、そりゃ嬉しいね」


もう優しくていい男はこりごりなの。


そんな気持ちが無意識に働いて泣きながら少しだけエースを睨んだ。


でもエースは変わらずの笑みで。


私の頭を優しく撫で続けて、優しく私を諭してくれる。


「好きなだけ泣きゃあいいし、言いてぇことは全部言ってすっきりしな、全部聞いてやっから」


その言葉が魔法みたいに胸に染みて。



「……出来心、本命は君だ、もうしねぇから、信じて、なんて、」

「うん」

「今も愛してるのは君だけ、なんて、分かんないよ、もう、」

「うん」


エース。


優しいの。


ずるいの。


甘えたいの。


分かってるのは、エースの気持ち。


知ってる。



「だって、サンジくん私に言ってた甘い言葉、相手の女にも同じこと言ってたんだよ」

「あー…バカだねーあいつ」

「でしょ?しかも相手の女も私の存在知ってるのに、ブログに堂々とサンジくんとしたこととか言われたこととか、」


サンジくんの特別なんて、結局嘘で。



君はいつだっておれの気ままなお姫様。


好きすぎておかしくなっちまう。


愛しのプリンセス。


女神、天使、スイートハニー、愛してる、愛してる、愛してる。


他にも、もっともっといっぱい。


特別にもらってたこの愛の言葉達。


全部他の女にもあげてた。



「ハ、つーかそれ、女もバカだろ」

「たまたま見付けちゃって見ちゃっただけなんだよ、それでこんなにどん底に落とされるなんて…」

「けどさ、じゃあヒロインは、それ知らねぇ方が良かった?」

「……わかんない、でも知らなかったら今もきっとのうのうと愛されてた」

「フ、じゃあおれにとっちゃ好都合だったのかもな」

「…!エース…」


そうしてエースは私の髪の感触を楽しむように撫でていた手で、今度は涙を拭ってくれた。


エースのあたたかい手が頬に触れた瞬間からだがぴくりと反応して少し強張ってしまったけれど。


そんな私にエースも気付いていると思うけれど。


「でもあいつ…、サンジ、それでもヒロインのこと引き止めたんだろ?」

「…ん、だけど私はもう信じられないから」


エースは微笑んだまま、ずっと優しくし続けてくれている。


そんなエースに安心してる私もいて。


しかも、サンジくんよりも高い体温が不覚にも心地いいなんて。


「まぁな、そらそうだ、サンジの蒔いた種だし、自業自得だな」

「そうだよ、…サンジくんもバカだし、相手の女もバカだし、」

「ああ」

「…それに私もバカだし、エースもバカだし!みーんなバカ!!!」

「ぶっ!なんでおれもだよ!」


私はずるいの。


バカだよ、エース。


私エースの気持ち、知ってるよ。


それに私が知ってるの、エースも知ってるでしょ。


だからエースもずるいの。



それからエースは、わけわかんねーなんて言いながらも、持ち前の太陽みたいな笑顔で楽しそうにゲラゲラと笑っていて。


やっぱずるい、涙止まったよ。


その上つられて笑っちゃったりして。


こんなふうに笑い飛ばして元気を貰えることは、サンジくんといてもなかったと思った。



「おっし、泣き止んだな」

「はい、お陰さまで」

「フ、じゃあ……あ、」

「あ、電話…」


するとその時、私のケータイが鳴って。


まだ着信音は、特別に、したままだったから。


見なくても分かる。サンジくんだ…。



「出なくていいのかよ」

「うん、いーよ、ごめんなんてもう聞きたくない」

「ふーん…」


だけどもうきっぱり別れてきたんだし、言い訳なんて聞けば聞くほど傷付くし。


これ以上私にはサンジくんとする話なんてないから。


電源を切ってしまおうと思い、鞄の中からケータイを取り出して手にした。


けれどその瞬間。


ひょいとそのケータイをエースが取り上げて。


そんな行動に呆気にとられていると、エースはなに食わぬ顔で通話ボタンを押して自身の耳に運んだんだ。



「エース…!かえし」

「しー」

「ヒロインちゃん!良かった、繋がって…!」


エースの意図は分からないけど。


なんとなくいい予感はしなくて、急いで返してもらおうとした。


でもケータイを持っていない方の手で私の唇の前に人差し指を立てて。


さっきまであんなに眩しい笑顔で笑ってたっていうのに一気に真剣な面持ちになったから、何故かそれ以上は強く出れなくなってしまった。


そして受話器越しに漏れて聞こえてくるサンジくんの声に複雑な気持ちになった。


…電話が繋がっただけでそんなにほっとした声を出すなら、浮気なんて最初からしなきゃいいのに。


サンジくんのバカ。



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