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さっきまで敵襲を受けていた。


強かったわけじゃねーが、何しろ数が多かった。


「あんた達、せっかく敵船に乗り込んだんだからお宝くらい持って帰ってきなさいよ!!」

「いいじゃねーか、無事だったんだから」

「ごめんよ〜ナミさん!おれが不甲斐ねぇばっかりに」

「まったく…、あーあ、もう遠くに行っちゃったじゃないの」


それに手を焼いていると、トリトリの実の能力者だかなんだか知らねーけど飛ぶやつにナミさんが拐われちまって。


まぁ、すぐに気付いたからおれとルフィで敵船に乗り込んで、戦いつつ無事にナミさんも救出してきたってわけだが。


おれとしたことが気の利かねェ。


ナミさんの好きな宝石一つ持って帰って来れねぇで、たった今お叱りを受けているところだ。



「ナミちゃん、」

「あ、ヒロイン、アンタはケガない?」

「おいナミ!ヒロインがあんくれぇの海賊共にやられるわけねーだろ!強ェもんな!ヒロイン!」

「ん、私は大丈夫、それよりナミちゃん、はいお宝」

「…え!?ヒロイン!!あんたコレどうしたのよ!」

「今、盗ってきたの」


そう言って、ヒロインちゃんはさっきまでおれ達も乗り込んでいた敵船を指差した。


敗けを認め、遠くの方へどんどんと小さくなっていくその船へと、ヒロインちゃんはたった今行き、そして戻ってきたらしい。


ヒロインちゃんが運んできた木箱の蓋を空けると、目の前には輝く宝石や財宝の数々。


「盗ってきたって…ヒロイン、能力で?」

「うん、そう、お世話になってるからさ、少しはみんなに恩返ししたいし」

「ヒロインーーー!アンタの能力最高よー!」


感激のあまりナミさんはヒロインちゃんにガバッと抱き付いた。


その行動にヒロインちゃんは驚いた顔をして、少し戸惑っている。


「でもよーヒロイン!おまえな、いい加減世話になってるとか水くせェこと言うのやめろよ!おれ達もう仲間だろ!」


そうしてルフィにこう言われるとヒロインちゃんは複雑な笑顔を見せた。


その笑みを見て、仲間になった頃にヒロインちゃんが言っていたセリフを思い出した。


“普通に人と接することに慣れていない”と、少しも笑わずに真顔で。



ヒロインちゃんは、政府のクソ野郎共から取り戻したロビンちゃんと、新たに仲間に加わったフランキーと共にこの船に乗った九人目の仲間だ。


エニエスロビーでの戦いを終えウォーターセブンへと帰った時だった。


アクアラグナにやられ壊滅状態になっている街の隅で、ケガをしてボロボロになっているレディを見付けたんだ。


このレディがヒロインちゃんだったわけで。


そんなヒロインちゃんを放っておけるわけねェから一緒に連れて帰り、それからチョッパーが手当てをした。


ケガはすげェけど命に別状はねェとのことだった。


そうして聞けばヒロインちゃんは、なんとあのアクアラグナに巻き込まれ、ウォーターセブンに流れ着いたらしく。


普通に考えてありえねぇこの出来事。


だがそんな中生き延びているヒロインちゃんは物凄ェ強運なんだろう。


戦闘の疲れからずっと眠っていたルフィだが、目覚めた時にそれを聞くやいなや、そんな強運の持ち主のヒロインちゃんをクソ気に入って。


チョッパーも治療を最後までやり遂げてェと言い。


おれも麗しいレディが増えるのは大歓迎だし。


ヒロインちゃん自身も行く宛てはねェと言っていたこともあり、まぁ若干強引だったかも知れねぇが。


晴れてこの新しい船サウザンドサニー号の仲間になったってわけだ。



「しかもヒロイン!!このお宝、いいものばかりよ!」

「ナミちゃんが気に入ってくれたなら良かった」

「さすが大怪盗ロードの娘ねー!!!」


一度ヒロインちゃんに抱き付いた後にすぐさまお宝の吟味を始めたナミさん。


質のいいお宝に更に気を良くしたみてェで上機嫌で今の言葉を発した。


けれどヒロインちゃんは、それに言葉を返すことはなく。


唇だけで弧を描いた作り笑顔を残してお宝に湧き賑わうこの場をさりげなく去っていった。



そんなヒロインちゃんがすげェ気になって。


追えばヒロインちゃんは、船尾の手すりに肘を付き手で顎を支え海を眺めていた。


「…っ、ヒロインちゃん!」

「あ…、サンジさん」

「あー…あのさ、さっきの、ナミさんが言ったこと、」


“大怪盗ロードの娘”


多分、これは、ヒロインちゃんにとって地雷。


この事実はヒロインちゃんの人生を狂わせたと言っても過言じゃねぇみてェで。


「ナミさんも悪気があって言ったわけじゃねぇはずだからさ…、えーと、」

「…うん、分かってます」

「そっか、…うん、気にすることねーよ」


気にすることねェ、なんて。


言ったところでヒロインちゃんの心の傷が癒えるわけでもねーだろうが…。



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